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筆者らが実施した東アジアにおける人材調査で、異文化環境において高い成果を出せる人材の特徴に、専門能力と語学力に加え「異なる価値観を受容し、情報非対称を解消し、環境に応じて場を最適化できる力」があることを確認しました。
それらの能力をブリッジ能力と呼び、その能力を活用している人材を「ブリッジ人材」と呼びます。
異文化では異なる価値観に直面する
当たり前のことのようですが、異文化では異なる価値観を有する人と仕事を進めることになります。例えば以下のようなケースに直面します。これは中国・上海における日系企業の現地経営者に対するインタビュー結果をそのまま抜粋した事例です。
・交渉では「その場」を重視する中国人
「中国は大陸でいろんな民族が交わる場所だったので、契約とかその場の交渉、予定よりも、その場で決めることを非常に重視します。その場で決めるってことは融通が利くってことなのですが、日本の人の場合最近は特に、予定した通りにいかないとすごくイライラしますね。日本の人は『なぜ決めた通りにできないのだ』と考えます。多分その方が効率が良い。予定通りにできるのだったらその方が効率が良いのでそうなっていると思います。その辺の違いは感じます」(C氏)
・品質と製造は別物と考える中国人技術者
「実際トラブルについて、納期と品質への意識が全然違いますね。たぶん中国の方たちは製造と品質は別のものだと考えています。日本では製造の中に品質が含まれていて、“完成した”という言葉は品質まで保証できたという意味を含んでいると思います。中国では、製造ができたというのは、まさにソースコードを書き終えた状態だと思うのです。それが“できた”という言葉の解釈です」(K氏)
オフショア開発では、こうした異なる価値観に直面し続ける日々を過ごすことになります。そこで重要になるブリッジ能力のポイントを紹介します。