本連載は、時間や空間を超えてソフトウェアの共同開発を目指す「オフショア開発」について、これを橋渡しするヒト(思考と行動特性)と多様性(言語・価値観・文化)の側面から探求し、海外事業展開で問題を抱えるソフトウェアサービス関係者に情報を提供します。
連載内容は、1回目がオフショア開発今昔物語(日本/中国/インド編)、2回目がブリッジ人材(日本/中国/ベトナム編)、3回目がブリッジ人材の発掘・育成方法です。
メイド・イン・○○の正体
大型家電店やネット通販のウェブチラシでメイド・イン・ジャパン以外の商品が目につきます。メイド・イン・チャイナ、メイド・イン・タイランド、メイド・イン・タイペイなど生産拠点がアジアに点在していることがわかります。製品としてのモノは、どこで作られたかがはっきり明示され、比較検討でき、「やっぱり日本製がいいな」とつぶやいたりします。
しかし、スマートフォン、パソコン、テレビなどの製品にはさまざまなソフトウェアが組み込まれていますが、ソースコードはどこで誰が書いたか、実はよく分かりません。会社や役所、学校で使っている業務アプリケーションやネット上のオープンソースなども人力によって作られたソフトウェアですが、請け負ったシステムベンダーは調べられても、どこで誰がどのようにソースコードを書いたのかユーザーには知る由もありません。
つまり買いたいモノの製造場所が分かっても、モノを作動させたり制御したり処理したりするソフトウェアの製造場所は不明なのが現実です。
静かなる革新的出来事--「アンスポーク・レボリューション」
21世紀に入り、メーカーだけでなく、IT企業もコスト低減、リソース確保から海外開発(オフショア開発と呼びます)を展開し始めました。しかし、オフショア開発が活発化してきたにもかかわらず、その実態はごく一部の関係者が知るだけで、文化や言語、価値観の異なる技術者で作り上げる開発プロセスは謎に包まれていました。
これらのことはソフトウェア研究者の間でも「アンスポーク・レボリューション」と呼ばれ、実は静かなる革新的出来事だったのです。
つまり、メイド・イン・○○の正体は、動くモノとしての製品(どこで誰が作ったという事実)ははっきりしていますが、モノを動かす頭脳(ソフトウェア)はどこで誰が書いているか知られていないまま、時空を超えた共同開発が猛スピードで繰り広げられていたということです。