ガートナー ジャパンは5月31日、日本企業のオフショアリング金額の推計を発表した。この調査によると、2009年のオフショアリング金額は前年に比べ7.6%減少し、3590億円となった。
日本企業のオフショアリング金額は、ガートナーが推計を開始した2004年以降、毎年30%前後の勢いで拡大を続けてきたが、2009年に初めて減少に転じた。特に、業務アプリケーション開発と、組み込み式アプリケーションおよびソフトウェア製品開発の2分野が影響を受け、2008年に対してそれぞれ9.0%、9.5%の縮小となった。ガートナーではこの背景として、ITプロジェクトの凍結に伴う発注量の伸び悩み、単価引き下げ要求の激化、大手ベンダーによる国内回帰の影響などがあったと考えている。
オフショアリング先として、全体の84%を占める中国が、日本企業にとっての最大ロケーションとしての地位を堅持。エンジニア単価の低さ、日本からの距離、日本語対応が可能なエンジニアの多さに加え、受託可能な業務内容の幅広さが強みとなっているという。しかし、2009年のオフショアリング不振の波は同国にも及び、金額規模は3030億円で、前年より260億円近く減少したとガートナーでは推計している。また、厳しい市場環境を受けて、スキルや顧客基盤の弱い中国ベンダーの中には、現地市場向けに事業転換を図った企業が見られたという。
2010年1〜3月期は大連、北京、上海各市のオフショアリング受託量が回復傾向にあるが、財務状態の不安定な中国ベンダーの間では予断を許さない状況が続いていると同社はみており、日本企業にとってはビジネス継続性の高い優良なベンダーの選定が課題になるとしている。
一方、インドは2008年から2年連続で日本企業によるオフショアリング金額が低下し、2009年は530億円強で、シェアは全体の15%となった。日本人エンジニアとの単価差や技術者数だけを追求したインドのオフショアリングは、大半が失敗に終わった。日本企業にとってのインドの位置付けは確実に変化しつつあり、2010年はその過渡期にあるとガートナーでは分析している。
インドに対しては、世界全体をカバーしたグローバルデリバリモデルの重要拠点としての役割や、サービスの標準化と効率化における支援を求めていくべき段階に入ったと同社はみている。一方で、インドのエンジニアとベンダーには、欧米のリーディング企業におけるプロジェクト経験と知見、多国籍チームでの業務経験など日本および中国のベンダーやエンジニアにはない強みがあるとしている。今後は、グローバル展開を推進する多くの日本企業にとって重要なパートナーになっていくとガートナーでは予想している。
その他、ベトナム、ブラジル、タイなども、2009年はオフショアリング減退のあおりを受けたものの、その存在感は徐々に増しているという。これらの国は、オフショアリングの歴史が浅いことが課題だとガートナーは指摘している。また、ガートナーでは、オフショアリングを検討する日本企業に対して、オフショアリングに過大な期待を抱かず、長期的な視点を持って人材の育成に注力していくことを推奨している。