日本ヒューレット・パッカードは4月19日、稼動するアプリケーションの特性に合わせて仕様を使い分けるサーバマシンの新製品「HP Moonshot System」を同日から発売すると発表した。
横45cm、高さ19cm、奥行き90センチの小さなシャーシ(筐体)に最大45個のカートリッジ型サーバを格納できる。各カートリッジサーバは、稼動するソフトウェアに応じてチップやOSなどを選んで作り込めるのが特徴。省電力、省スペース性をアピールする考えだ。
Moonshot Systemを構成するのは、筐体である「Mooonshot 1500」、最大45台のカートリッジサーバ「ProLiant Moonshotサーバ」、2台のスイッチモジュール「Moonshot-45Gスイッチモジュールキット」、外部ネットワーク接続用の「Moonshot-6SFP」の4製品。
HPが発表した「HP Moonshot System」。従来ならタワーラック1台分のスペースがこのシャーシで収まる。シャーシの上、手前に見えるのがMoonshotサーバ、奥に見えるのがスイッチモジュールキットとファン
「垂直統合マシン」ではない
このMoonshot Systemは、複数台のカートリッジサーバが連携するというよりは、1台ごとに用途を定義し、独立して稼動することを前提にしている。このため、データベース、ミドルウェア、アプリケーションなどの機能を一つの筐体に詰め込み、複数サーバのリソースパワーを仮想的にプールして重い処理を実行する「垂直統合型」マシンとはコンセプトが異なる。
大量のウェブサーバを持つISPなどがフロントエンド用に利用するのが最も相性の良い用途といえるが、Hadoop、オンラインゲームなど、通信/デジタル信号処理(Digital Signal Processing)などさまざまな用途をHPは想定しているという。
カートリッジサーバのスペックは、CPUがIntel Atom S1260(2コア/2GHz)、メモリは8GB DDR3 ECC対応。最大19ワットという電力消費の低さも特徴としている。チップ、OS、ソフトウェアといった各パートナーと協力し、例えば1秒間のトランザクション数に最も適切に対応したいなど、顧客の用途に最適化したサーバとして提供する。HPはこれを指し、「Software Defined Server」であるとした。
カートリッジサーバ「HP Moonshot System」
年内には、1台で4サーバの機能を持つ「クワッドサーバカートリッジ」をリリース予定という。この場合は、シャーシあたり、クワッド(4)サーバ×45カートリッジで、180台のサーバを格納できる。シングルサーバカートリッジ利用時でも、現状の1ラックに相当するパワーのサーバをこの小さなシャーシに入れられる高密度性が特徴だ。
来日した米HPのマーケティング担当バイスプレジデント、Jim Ganthier氏は「通常のサーバなら1台あたり200ワット近い電力を消費するが、Moonshotの場合は最大19ワットだ」と省電力性を強調。
米HPのマーケティング担当バイスプレジデント、Jim Ganthier氏
日本HPの常務執行役員でエンタープライズインフラストラクチャー事業統括の杉原博茂氏は「従来型サーバでサッカー場20個のスペース、30万キロワットの消費電力、394億円の電気代がかかっていた環境を、Moonshot Systemを利用することで、サッカー場1.4個、3万3000キロワット、43億円まで削減できる」と省スペース、省電力性などを数字を用いて説明した。
Moonshot Systemの価格は、45ノード構成で1222万2000円から。