IT専門のリサーチ&コンサルティングを行うITRは5月15日、国内のITエグゼクティブを対象としたコンファレンス「IT Trend 2013」を都内で開催した。
今回のテーマは「変革と創造で攻めに転じるIT戦略への指針」。全12の講演/セッションが行われ、多角的な視点からIT戦略とその実践手法が詳らかにされた。
拠点の「断片化」が引き起こす俊敏性と可視化の欠如
セッションの中でも注目されたのが、韓国Samsung Groupが導入している製造実行システム(MES)の運用管理事例である。
Samsung GroupのIT関連事業を手掛けるSamsung SDSのグループ企業であるMiracomで、技術部門マネージング・ディレクターを務めるジュード・ユン(Jude Yun)氏
Samsung GroupのIT関連事業を手掛けるSamsung SDSのグループ企業であるMiracomで、技術部門マネージング・ディレクターを務めるJude Yun(ジュード・ユン)氏の特別講演「Samsungが実践―MDMを統合したMESによるグローバルオペレーションの一元管理」には、業務の効率化を課題とする企業のCIOらが多数参加した(編注:ここでいうMDMはマスターデータ管理=「Master Data Management」の略)。
Yun氏は世界各国に拠点を構え、グローバルにビジネス展開をしている企業が抱える課題として「分散拠点ごとに格納されている情報のサイロ化と、オペレーションの不可視化」を挙げる。「その結果、意思決定が遅れ、新製品の開発支援が困難になっている」と指摘した。
「Samsungはスマートフォンの新製品を3カ月ごとに、6カ月の製品サイクルでリリースしている。状況変化の激しい同市場で意思決定が遅れれば、それは企業にとって致命傷になる」(Yun氏)
グローバルに製造拠点を持つ企業において、製造マスターデータの標準化と一元管理は利益率と効率性を最大化させるために不可欠である。また、通信プロトコルとインターフェースの標準化も重要だ。しかし実際は、各拠点で異なるシステムを運用しているケースも多い。仮にMESを導入していたとしても、バージョンが統一されていないなどの理由から、システムが断片化していることも少なくない。
こうした課題についてYun氏は「変化の速いビジネス環境に対応したMESが不可欠である」と語り、Samsungでも運用している「Samsung SDS MES empowered by Informatica MDM」の導入効果について語った。
ベストプラクティスを迅速にグローバル展開し、競争力を高める
Samsung SDS MES empowered by Informatica MDMは、連携されていないMESとサブシステムを統合し、中央からの一元管理を可能にするソフトウェアである。全拠点が持つデータの完全性と整合性を確保し、各拠点の環境に最適な状態でデータを維持することが可能。
これにより、例えば機能開発の重複を防止したり、メンテナンスやアップグレードに伴うコストを削減したりできる。
その上でYun氏は、Samsung SDS MES empowered by Informatica MDM導入の大きなメリットとして、「マスターデータの統合と標準化、複数拠点のKPI(重要業績評価指標)を比較/分析することで、ベストプラクティスを迅速に普及させられること」を挙げる。
「1つの拠点で開発したものは、ほかの拠点でもそのノウハウが活用されるべきだ。ベストプラクティスを世界に展開することで、すべての製造拠点の競争力を効率的に向上させることができる」(Yun氏)
実際、このソフトウェアを実装した企業では、年間数千万ドルのコスト削減を実現した実績もあるという。
最後にYun氏は「グローバルで競争力を高めるには、リーダーの迅速な意思決定と製造プロセスの最適化が鍵になる」と語り、急速に変化するビジネス環境にいち早く対応できる体制作りが必要であると強調した。
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