アクセンチュアは11月1日、クラウドファンディング方式の就労支援サイト「ユースアクティベーション」を構築したと発表した。一般社団法人のアスバシ教育基金と協力し、地域NPO(非営利活動法人)などが手がける小中高生向けの就労インターンシッププログラムを全国ネットワークとして展開していく。
地域住民や地域の企業だけでなく、全国の市民や企業が地域のインターンシッププログラムに寄付しやすくした。プログラムの成果は、サイト上で全国の就労状況が分かるヒートマップとして公開し、“オープンデータ”としても活用できるようにする。2018年までに単年で寄付金額6億円を目標にする。
ユースアクティベーションは、企業や市民の寄付金を元手に就労前の若者に対してインターンシップなどの体験活動への参加を支援し、自分の目標にあった能力や知識、意欲などを獲得させようという活動。アスバシ教育基金が2011年から取り組んでおり、これまでに愛知と大阪でそれぞれ500万円、1000万円の寄付金を使った高校生インターンシップを実現させてきた。今回構築したユースアクティベーションのサイトは、その取り組みをクラウドファウンディングの仕組みを使って全国レベルで展開する。
アスバシ教育基金 代表理事 毛受芳高氏
アスバシ教育基金の代表理事である毛受芳高氏によると、若年層の就労で問題になる雇用のミスマッチは、小中高生の間に自分の能力と折り合いをつけながら、自分の目標を探すという活動が足りないことに原因の1つがある。「自分の目標に見合った能力や知識を身につけずに高校や大学の卒業を迎えるため、希望と現実のギャップを埋めることが難しくなる」(毛受氏)という。
行政や教育機関が、高校や大学卒業後に起こる就労問題への対処に追われ、在学中のキャリア教育に手が回っていない実態もある。アスバシ教育基金が調査したところ、全都道府県の就労支援対策予算318億円のうち、人件費補助などの予算が43.2%(137億円)、相談所の設置などが21.7%(69億円)だったのに対し、キャリアカウンセラーなどの配置は4.3%(14億円)、高校向けインターンシップ支援などは3.6%(11億円)にとどまっていた。
「十分なキャリア教育が実施できないまま卒業を迎え、就職が困難になって行政がその対処に追われているのが現状だ。就労問題は、小中高からの予防的な対策に注目していく必要がある。なかでも、目標と意欲を持たせる上で効果的な対策になるのが実践型インターンシップだ。企業活動に参加することで、それまで無気力だった子どもが本来の輝きを取り戻すさまを何度も見てきた」(毛受氏)
同日から公開したサイトでは東京や愛知、三重、大阪、沖縄の5つのプロジェクトを掲載した。たとえば、沖縄のケースは、離島の若者を離島の地域活性化のためのプロデューサーや起業家として育成しようというプロジェクトだ。NPO沖縄キャリア教育学校支援ネットワークが企画し、30万円の寄付を募っている。
三重のケースは、地元の中小企業のもとに高校生をインターンシップとして派遣するプロジェクト。三重のNPOであるa trioが企画し寄付金は12万円となる。東京のケースは、虐待などで引きこもりになった若者に対してeラーニングで学習を支援するというプロジェクトだ。東京のNPO、ピアサポートネットしぶやが企画したもので、eラーニングのためのPC購入、教材、サポートする若者への就労準備などの費用として120万円を募っている。
サイト上では、こうしたクラウドファンディング機能だけではなく、「就労環境全国マップ」「都道府県レベル指標詳細表示」「プロジェクト活動結果報告」「取組成果全国マップ」といったメニューが提供される。
就労環境全国マップは、若者の無業者率や卒業後3年以内の離職率、高校生のインターンシップ実施率などを全国のヒートマップで表示する。たとえば沖縄県は、高校生のインターンシップ実施率が99.5%で全国トップでありながら、高卒無業者割合と大卒無業者割合がそれぞれ15.2%、27.1%という実態を把握できる。都道府県レベル指標詳細表示はこれらデータを都道府県別に表示したものだ。