コミュニケーションの環境で大きく変わる--シスコが挑む遠隔医療の可能性

山田竜司 (編集部)

2014-01-21 12:11

 シスコシステムズは1月16日、遠隔医療向けのコミュニケーション基盤となるソフトウェア新版「Cisco HealthPresence 2.5」を発表した。ポータルサーバをポータルサーバを中心に患者情報を共有し、聴診器など医療診断装置や、血圧、体温などがわかるモニターや酸素濃度計、電子カルテと連動できる。価格は1万6000ドル、2013年12月より販売している。


京都大学医学部付属病院 黒田知宏教授

 同社は遠隔医療分野での取り組みをテーマにした記者説明会を同日に開催。その中で、京都大学医学部附属病院教授の黒田知宏氏が2013年10月から取り組んでいる滋賀県長浜市での遠隔医療事業「湖北遠隔医療事業」を紹介した。

 住宅や医療出張所に映像会議、既存のコンピュータと医療システムを連携させ遠隔での治療を試みるというものだ。「(手術など)大規模な治療は大きな病院で、小さなものは診療所などの棲み分けが可能となる。患者の移動負担を少なく、医者の専門性を生かした医療の姿を模索している」(黒田氏)

 黒田氏は病院ごとの派閥や医者という命を扱う職業柄、保守的にならざるを得ず医療のIT化が進まないという実情を説明。一方で今回の事業により、遠隔地コミュニュケーションの環境さえ用意できれば利用する人が現れ、遠隔医療が変わる可能性は大いにあるとした。黒田氏はすでに同様のシステムの実績がある米国やインドを引き合いに出しながら、テレビ電話や電子カルテ、電子聴診器など既存の製品や技術を組み合わせて遠隔医療は実現可能と強調した。

 黒田氏は家庭に医療機器が展開しはじめている現状を解説した。オムロンのクラウドで血圧などを管理するサービスを提供し、健康状況を毎日クラウドにアップロードして体調を管理することができるタニタのサービス「からだカルテ」などがすでにある。これらから遠隔医療の可能性を語った。


シスコシステムズ 岩丸宏明氏

 シスコシステムズで公共営業でセールスアーキテクトを担当する岩丸宏明氏は同社が構想する「Internet of Everything(IoE)」を引き合いに出しながら、医療機器をネットワークにつなぐことで可能になる遠隔医療の可能性を語った。今回発表したHealthPresence 2.5以外にも遠隔医療分野に多くの製品を展開しているとアピールした。

 シスコが提供している医用画像管理システム「Cisco Connected Imaging」では、高価なグラフィックプロセッサ(GPU)を搭載した高価な専門機器でしか閲覧できなかった医用画像に、仮想デスクトップ経由でアクセスできるという。仮想サーバの環境でGPUの機能とリソースを共有できる環境を実現したためという。

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