速いことが良いユーザー体験--アカマイのユーザーイベント

ZDNET Japan Staff

2014-03-28 07:30

 アカマイ・テクノロジーズは2月末、都内のホテルでユーザー向けセミナー「Akamai Enterprise Conference 2014」を開催した。登壇したアカマイ・テクノロジーズの職務執行者社長 、徳永信二氏は、開催のあいさつの中でソチ五輪に触れ、世界25社以上のメディアがAkamaiのネットワークを活用し、世界中に五輪のリアルタイム映像を放映したことを紹介した。

アカマイ・テクノロジーズ 職務執行者社長 徳永信二氏
アカマイ・テクノロジーズ 職務執行者社長 徳永信二氏

 「オンラインビデオの視聴トラフィックのピークは、3.5Tbpsにも達しました。この数値は、2012年のロンドン五輪において、ウサイン・ボルト選手が出場した男子100m決勝のときの4倍です」(徳永氏)

 この様子は米Akamaiのウェブサイトでも紹介されており、会期を通じて膨大なトラフィックがAkamaiのネットワークを通じて世界中に配信されたことが分かるだろう。これによると、最大のピークに達したのは、アイスホッケー男子のセミファイナル、米国対カナダ戦であったそうだ。

世界中に優れたインターネット環境を

 イベント最初のセッションでは、Akamai Technologiesで製品、開発プレジデントを務めるRick McConnell氏が登壇し、「Creating a Faster Forward World」と題して、ソリューションの最新情報を紹介した。

米Akamai Technologies製品・開発プレジデント Rick McConnell氏
米Akamai Technologies製品・開発プレジデント Rick McConnell氏

 「われわれの製品ビジョンは“ハイパーコネクテッドな世界において、ユーザー体験を変革すること”です。エンドユーザーが、Akamaiの製品やサービスを通じてより良い体験を得られること。それを中心に考えることが重要なのです」(McConnell氏)

 同社のネットワークサービスは、大きく「Aqua(Web)」「Sola(Media)」「Terra(Enterprise)」「Kona(Security)」「Aura(Network)」という5つで構成されており、クラウドプラットフォーム「Akamai Intelligent Platform」上で提供されている。

 このプラットフォームは、世界2000以上ものインターネットエッジに配備された13万台以上ものサーバ群で構成されており、McConnell氏によれば「世界中のユーザーの約9割が20ミリ秒以内の遅延でアクセスできる距離」に存在しているという。

 さらに同氏は、2013年10月に発表した「Akamai Open Platform Initiative」についても触れた。これは、Akamai Intelligent Platformに対し、サードパーティ製のアプリケーションからAPIを通じてアクセスし、ネットワークの制御や通信の可視化できるようにするものである。すでに、アラートやレポート、課金情報、WAF管理、セキュリティポリシー管理などを実現するベータ版が公開されている。

4分野に注力

 今回の講演でMcConnell氏は、4つの領域の新しい取り組みを紹介した。

 ソチ五輪の事例も関連するMedia&Deliverlyの分野で、McConnell氏は「特にインターネットを介したビデオ視聴が広まって、トラフィックの量も密度も急速に増大している。2013年の時点でAkamaiのキャパシティは21Tbpsですが、今後数年で50Tbpsは必要になる」と話し、さらなるプラットフォームの整備とスケールの拡大に取り組み、高品質なビデオ配信を担保すると約束した。

 McConnell氏は「Web Experience」の考え方が好きだと話す。必要なのは、高速化によってどのようなデバイスでも、すぐにウェブコンテンツを閲覧できることだ。「ECサイトでは、ページのロードが速ければ速いほど商品が売れます。銀行やビデオ配信においても同様で“速いこと”が良いユーザー体験なのです。われわれは、手軽な高速化で最高のエクスペリエンスを提供します」

 Web Experienceの分野で2番目のポイントとなるのは「セルフサービス」だという。Akamaiは2013年5月、ユーザー自身でネットワークの設定を自由にカスタマイズできる「Luna Control Center」インターフェースを提供している。さらに、前述したAPIと組み合わせることにより、独自の“Lunaポータル”を構築することも可能であるという。

 「サービスは速ければ速いほど役に立ちますが、つながらなければ意味がありません。例えば、DDoS攻撃などによってサービス不能に陥る恐れがあります。そのためウェブセキュリティは重要な分野です」(McConnell氏)

 Akamaiは2014年2月、DDoS攻撃対策ソリューションを提供する米Prolexic Technologiesを買収したことを発表している。「これまで当社が注力してきたウェブセキュリティは、包括的で非常に深度の深いものです。これにプロレクシックの技術が加わることで、非常に幅広い領域についても保護できるようになりました」(McConnell氏)

 さらにセキュリティの分野では、毎日2兆ヒットという膨大なアクセスを処理する中で生成されるビッグデータを活用し、実際に攻撃を受けているユーザーを保護するだけでなく、これから攻撃を受ける可能性のあるユーザーも未然に保護するという取り組みも行っているという。

ラストワンマイルまでカバー

 4つ目のソリューション領域は、「ハイブリッドWAN」である。これまでのAkamaiは、ユーザーに近いインターネットエッジまでサービスを提供するもので、「最後の一歩を超えていない」(McConnell氏)という状況であった。

 そこで同社は、シスコシステムズの「Cisco ISR-AXルータ」にAkamaiの技術を統合し、ユーザー企業の内部ネットワークまでAkamaiの製品やサービスを提供しようとしている。これにより、インターネットトラフィックの最適化や拠点間回線コストの削減が図れるという。実際に対応製品が発売されるのは、2014年の第3四半期ごろの予定とのことだ。

グローバル、クラウド時代に強いNTT comと協業

NTTコミュニケーションズからクラウドサービス部 ホスティングサービス部門長 関洋介氏
NTTコミュニケーションズからクラウドサービス部 ホスティングサービス部門長 関洋介氏

 続いて、アカマイの重要なパートナーの1つであるNTTコミュニケーションズからクラウドサービス部 ホスティングサービス部門長の関洋介氏が登壇し「アカマイ・テクノロジーズとのパートナーシップ NTT Comのグローバルクラウド戦略」と題した講演を行った。

 同社は、2011年11月に「グローバルクラウドビジョン」を発表し、クラウド事業への注力を開始している。さらに2013年に更新された「Grobal Cloud Vision 2013」においては、9つの大きなビジョンを打ち出して、その実現に向けて邁進しているとのことだ。

 両社がサービス提携を発表したのは2003年、“ブロードバンド時代”が始まったころのことだ。コンテンツデリバリネットワーク(CDN)のトップシェアを誇るアカマイと国内最大級のバックボーンネットワークを持つNTT Comの協業によって、「Broadband CDN Powerd by Akamai」の販売がスタートした。

 「2003年のころは、まだアカマイの配信サーバも少なく、当社のインフラに配信サーバを配置していました。2006年ごろには、配信サーバをすべてアカマイに任せるという環境が整いました。そして2013年には、徳永社長からグローバル時代・クラウド時代に合わせたパートナーシップを結ぶことを提案され、現在も活発に議論しています」(関氏)

 その一環として、2013年6月に両社は「ネットアライアンスパートナー契約」を締結し、NTT Comのクラウド基盤を活用した「ウェブ高速化クラウド」というサービスの提供を開始している。スケーラビリティの高いBizホスティング Enterprise Cloudとアカマイの製品を組み合わせて、大規模配信、海外配信に対応できるセキュアなウェブシステムが構築できる。また、NTT Comによるワンストップでの保守、サポートも受けられるのが特徴だとしている。

NTT Comとアカマイによるウェブ高速化クラウド

 「今後も、両社の強みを生かして、ユーザーのさまざまな課題を解決するベストな製品を提供していきたい」(関氏)

 さらに今回のセミナーでは、事例のセッションもあった。

 カルソニックカンセイは、海外展開の際にアカマイの製品やサービスを活用した事例を紹介し、パナソニックは「ブランド強化のためのグローバルウェブの統合」をテーマに講演した。三菱UFJニコスでは新しいクレジットカード決済「J-Mups」の実現するため、イオンではインターネットを活用した新しい買い物というユーザー体験において、アカマイのソリューションが担った役割について紹介した。

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