本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、デジタルアーツ海外戦略アドバイザー兼FinalCode取締役のHoward A. Schmidt 氏と、シマンテックの関谷剛 常務執行役員の発言を紹介する。
「企業はサイバーセキュリティ対策をビジネスプロセスの中核に据えるべきだ」 (Howard A. Schmidt デジタルアーツ海外戦略アドバイザー兼FinalCode取締役)
デジタルアーツ海外戦略アドバイザー兼FinalCode取締役のHoward A. Schmidt氏
デジタルアーツが先ごろ、オバマ政権のサイバーセキュリティ特別補佐官などを歴任したHoward A. Schmidt氏が5月1日付けで同社の海外戦略アドバイザー兼米国子会社FinalCode取締役に就任したのに伴い、来日した同氏と同社の道具登志夫社長が揃って記者会見を開いた。
Schmidt氏の冒頭の発言はその会見で、「世界のサイバーセキュリティの最新動向と今後の日本国内でのセキュリティについて」と題したスピーチの中で、「企業はサイバーセキュリティ対策をコストセンターと見てはいけない」と前置きして強調したものである。
Schmidt氏は、米国における情報セキュリティの専門家として40年以上の経験があり、2001年から2003年のブッシュ政権で要職を歴任した後、オバマ政権の2009年から2012年にサイバーセキュリティ調整官を務めるとともに、MicrosoftやeBayなどでセキュリティ対策の責任者を務めた。現在は、Ridge-Schmidt Cyber, LLCの共同パートナーとして各国政府やグローバル企業の経営陣を中心としたアドバイスやコンサルティングを行っている。
そして、今回のデジタルアーツの人事において、同氏はFinalCodeの北米における事業展開に向けてセキュリティ業界における人脈と経験を生かし、ファイルセキュリティが必要とされる大手企業を中心に、ファイルを暗号化して追跡するソフトウェア「FinalCode」の導入促進を支援するとともに、北米での販売戦略の策定を担うとしている。
Schmidt氏はFinalCode取締役就任に際して、こうコメントした。
「サイバーセキュリティにおいては、日々新たな攻撃や未解決の問題が生まれており、世界的に見ても早急な対応が必要だと認識している。ただ、従来のセキュリティ対策は未然に情報漏えいを防ぐことを目的としており、昨今の巧妙な攻撃による情報漏えい対策として万全とはいえない。FinalCodeの製品はファイルの暗号化をはじめ、手元から離れたファイルのアクセス履歴がわかり、また、いざとなれば拡散したそれらのファイルを遠隔でいつでも削除できる点が新しく、これらのセキュリティ対策として有効であると確信したので、FinalCodeの経営に参画することにした」
Schmidt氏の会見でのスピーチの詳しい内容については関連記事を参照いただくとして、質疑応答で筆者が問うた、元CIA職員であるSnowden氏の機密情報暴露事件に対する見解について、同氏はこう語った。