明日は仕事の取引先と大事な食事。そんな時、意中の相手の心をギュッとつかむには、相手を満足させ、ビジネスを成功に導くには――。今どき、おカタい仕事の話ばかりしていてはノン、ノン。宴席で政治、宗教、野球の話はタブーと言いますが、お酒の席で仕事人間丸出しもモテません。
私がまだうら若き社会人2、3年目の新人のころ、キャリアに悩み、ハウツー本を手当たり次第読みあさっていたことがありました。数百冊におよぶ書籍から学んだのは、自己啓発本はあくまで著者のサクセスストーリーのお披露目の場であり、ヒントはくれても自ら実践しない限り役に立たないということ。
せっかく本から得たノウハウを実践できない自分に嫌気がさしました。今はあまり読まなくなりましたが、最近影響を受けた本に『「悪女」の仕事術』(ダイヤモンド社)があります。
著者の藤田尚弓さんは、地方警察署勤務後結婚退職し、離婚を経て銀座ホステスへ転身。その後警備会社の営業職で業績を出し、会社始まって以来の女性管理職に抜擢されます。退職後、ウェブ制作会社を起業し、現在は豊富な営業経験を生かして「コミュニケーション研究家」としてメディアなどで活躍しています。
実際にお会いしてみると、赤い薔薇のように華やかで色香漂う知的美女でした。警察署や警備会社勤務時代、周りの殿方はさぞドキドキしていたに違いありません。
『「悪女」の仕事術』(ダイヤモンド社)
さて、『「悪女」の仕事術』。キャッチーなタイトルですね。悪女というと、一般に性悪で男を破滅に導くとんでもない女という負のイメージがありますが、彼女の推奨する「悪女」はちょっと違います。「悪女=賢く仕事と人生をコントロールする魅力的な女性」と定義し、自立した素敵な「悪女」になるためのテクニックを紹介しているのですが、その中には男性にも応用できる内容が盛りだくさん。
私みたいなヒヨッコが言うまでもなく、人脈づくりはビジネスの肝です。藤田さんは、著書の中で、「成功者との接点を広げるには、さりげなく相手が関心のあるテーマについて必要最低限の基礎をマスターすべき」と言っています。その必修5科目は、歴史、経済、株、英語、ワイン。仕事以外の話で相手をどれだけ引きつけるか、そこがデキる男の腕の見せどころなんです。
ワインは単なる飲み物ではなく文化。ボトル1本に大小さまざまなストーリーが綺羅星のごとく詰まっています。うんちくをひけらかすのはイタい男ですが、「マリリン・モンローの目覚めの一杯は……」「『007』のジェームズ・ボンドが愛したシャンパーニュは……」など、映画や小説等と絡めたネタは、女子うけもバッチリ。飲み会やデートでも盛り上がること請け合いです。デキる男はモテるんです。
「いつも行くのは居酒屋だし」
「うちの会社の人達はワイン飲まないから」
そうでしょうか? 私も前職では、「お高い女と思われたらイヤ」という理由で、ワイン好きをひた隠しにしていました。会話の端々からにじみ出ていたのか、もしくは出社時に酒(ワイン)臭かったのか……。
結局バレて、それをきっかけに上司との仲が深まったり、社内でワイン講座を開くことになったりと、面白い展開になりました。社内の飲み会はいつも居酒屋なのに、私の退職時の送別会は、安旨ワインが飲めるお洒落ビストロ。餞別にドン・ペリニオンの2004年を頂き、嬉しかったなぁ。口に出さないだけで、必ず職場にワイン好きは潜んでいます。少し余裕の出てくる40~50代、相当どっぷりハマっている可能性も。
「ワインは難しくてさっぱり」
「飲んでも味がわからない」
大丈夫です。難しいイメージが付きまとうワインも、ビールやホッピーと同じお酒。お酒は、楽しく飲むのが基本です。まずは最初のステップとして「最近ワインに興味がある」「ワインが好き」と口に出す事から始めましょう。
そこから生まれる人間関係は、ビジネスだけでなく人生に変化をもたらすはず(私はそれで職を変え、安定した人生を捨てるハメに……)。デキる男のみなさま、ようこそ、ワイン道へ。
- 青山葉月
- ライター/ソムリエ/旅人
- 大学卒業後、某大手通信企業でのシステム保守時代にワインに出会い、あっさりワインの道へ方向転換。「飲んで覚える」をモットーに、3年間で200回以上のワイン会、イベント、試飲会に参加し、2013年に独学でJ.S.A認定ワインエキスパートを取得。現在はライター業のかたわら、夜は都内のワイン・バーにてソムリエールとして働く。また、ワインユニット「G.G.Wine」でワインイベントの企画プロデュースを担当し、ワインの魅力を伝えるべく活動中。ワイン×文化をコンセプトにしたサロン『寄席坂さろん』主宰。趣味は角打ちと海外放浪。このコラムでは、ビジネスマンに役立つワイン・ネタをお届けしたいと思います。