第一線のLinux開発者であるGreg Kroah-Hartman氏は最近、とうとう「従来型の」Linuxディストリビューションをやめて、「ローリングリリース」のLinuxシステムに移行すると表明した。同氏だけではない。ローリングリリースディストリビューションの人気は高まるばかりだ。では、ローリングリリースのLinuxディストリビューションとはいったい何だろうか。説明しよう。
ローリングリリースのLinuxディストリビューションとは、常にアップデートされるディストリビューションのことだ。それはDevOpsの継続的なデプロイメントという考え方に似ていると思う人もいるだろう。そう考えて構わない。どちらの場合にも、ユーザーと開発者にとって、最新のアップデートとパッチが作成されればすぐに提供するのが一番良いというのが基本的な考え方だ。
ローリングリリースのやり方にはいくつかの方法がある。その1つは、小規模なアップデートを頻繁に行うことで、これは「Arch Linux」が用いているモデルである。その他には、ソフトウェアに変更が加えられた時点で、OSやプログラムの古いイメージを、新しいイメージで置き換える方法がある。「Ubuntu Core」はこのアプローチを採用している。
Arch Linuxは、よく知られたローリングリリースのLinuxだ。
これを聞くと、このアプローチは、大抵最新のプログラムを欲しがる開発者しか気に入らないもの、と最初に考えるかもしれない。DevOpsの発展を受けて、ローリングリリースはエンタープライズソフトウェアのリリースにも普及し始めている。CoreOSが、クラウドやデータセンターに向けたエンタープライズ用Linuxディストリビューションのために採用したモデルがこれだ。
ローリングリリースの人気は上昇しているかもしれないが、こうしたソフトウェアリリースの手法は新しいものではない。最も古い現役のディストリビューションの1つであり、Googleの「Chrome OS Linux」の原型の1つである「Gentoo Linux」は、このアプローチを15年近く採用してきている。
固定リリースモデルは、大半のユーザーがよく知っているモデルだ。このモデルを採用しているのは、Canonicalの主力である「Ubuntu Linux」リリース、Red Hatの「Red Hat Enterprise Linux」(RHEL)、SUSEの「SUSE Linux Enterprise Server」(SLES)などだ。固定リリースでは、重要なディストリビューションはスケジュールに沿って作成され、セキュリティパッチやマイナーアップデートは随時行われる。
こうしたソフトウェアアップデートの手法のいずれにも、メリットとデメリットがある。例えば、ローリングリリースでは、本番システム内で重要なバグが現れる可能性がある。一方、固定リリースのLinuxでは大規模な改善が反映されるまでには、数カ月から数年もかかることがある。
では、どちらを使えばよいのだろうか。最新で性能が優れているが、いくつかバグがあるかもしれないものか、あるいは最も安定していて確実だが、最新の優れたソフトウェアは備えていないものか。
いずれの立場も理解できる。個人的意見を言うと、ローリングリリースは、熟練したユーザーが自分で使う場合や、流行の新しい機能改善を要求する顧客に対してのみ用いられるべきだと筆者は考える。それ以外のユーザー、特に本番環境には、固定リリースディストリビューションの安定性の方が賢明な選択肢だというのが筆者の見解だ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。