ニチコンは9月30日、蓄電システムやV2H(ビークルトゥホーム、EV用パワーコンディショナー)などの環境対応型商品に関して、日本IBMのIoTソリューションを活用して機器からのデータを活用できるようIoT化し、見守りや保守、太陽光発電システムの出力抑制に応じた外部制御を実施していくことを発表した。
日本IBMは、ニチコンの環境対応型商品のリモコン機器から積算電力量や電池残量、通電稼働時間などのデータを収集し、分析、異常検知、通知などの機能およびAPIを提供する。
ニチコンは、まず今年度から発売している家庭用蓄電システム(ESS-U2シリーズ)に機能を実装し、IBMのクラウドとの接続、テスト運用を7月から開始した。同システムは、販売チャネルごとに順次発売される。また将来的には、新電力会社などが運営するDR(デマンドレスポンス)、さらにはビッグデータの利用などに対応していくとしている。
ニチコンでは、東日本大震災以降の電力不安や、電力総需要の抑制やピークカット、ピークシフトなどに対応するため、また再生エネルギーの増大に伴う系統の不安定を解消するために、家庭用や業務用の蓄電システムやV2H、急速充電器などの環境対応型商品を市場導入してきた。
特に家庭用蓄電システムの分野では、2012年の発売以来累計で2.5万台以上の出荷実績を上げ、家庭用として生産シェアトップの規模を誇る。なお、2015年度の家庭用蓄電システムの市場規模は年間4万台程度が見込まれている。
ニチコン家庭用蓄電システム(ESS-U2シリーズ)の特徴は以下の通り。
- コンパクトな筐体に12kWhの大容量リチウムイオン蓄電池を搭載
- 温度特性に優れた新開発セルによって北海道の寒冷地への設置が可能(設置温度:-30℃~+40℃、運転温度:-20℃~+40℃)
- 屋外設置でも15年の長期保証を実現
これらの機器は通常の家電製品と違い、10年~15年という長期間の耐久性を保証するため、ネットワーク経由で機器の運転状態や蓄電池寿命などを把握することが必要となってくる。そこで同社では、これまでにもネット接続された蓄電システムから運転データの収集をすることで機器を見守ってきた。
しかし今後は、見守り機能に加え、太陽光発電システムの出力抑制制御や2016年4月の電力小売りの完全自由化以降に新電力各社が実施するDRといった外部からの運転制御やビッグデータの活用など、より新たな時代の要請に幅広く対応していく必要が生じてきている。そこでニチコンは、日本IBMのIoTソリューションを活用することで、これらのニーズへの順次対応と将来に向けた高い拡張性を確保することとした。
ネットワーク機能でみると、従来の太陽光発電や蓄電システムではHEMSのホームゲートウェイを介してサーバ接続する事例が多かったのに対し、同システムはHEMSを経由することなく、リモコンから直接ネットワーク接続できることが大きな特徴となっている。ネットワークへの接続方法も、有線LAN、無線LAN、3G回線などから選択できる。
また、機器の運転データ、寿命データを定期的にサーバに転送して分析することで、エラーへの迅速な対応や長期保証を担保するとともに、さらなる機能向上や品質向上を実現する機器のファームウェアもダウンロードできる。2016年4月に予定されている電力小売完全自由化に伴い、新電力会社からのDRを使った新たなサービスも想定されるが、これらにも新たな制御ソフトウェアで対応が可能となる。
プラットフォームについては、IBMのクラウドを用いることで海外展開でのサポートや、長期にわたる最適運用が可能になり、またビッグデータの利用も日本IBMの高度なセキュリティレベルで管理されるとしている。