米IBMが先ごろ、「IoT(Internet of Things:モノのインターネット)」事業に今後4年間で30億ドルを投資すると発表した。同事業に注力する経営の意思を明確にしたものだが、こうした意思表示の仕方は国産ベンダーも見習うべきではないか。
IBMがIoT事業に今後4年間で30億ドルを投資
IBMはIoT事業への投資強化とともに、専門組織の設立、および顧客やビジネスパートナーによるIoTソリューションの構築を支援するクラウド型のオープンプラットフォームを設けることも発表した。
同社によると、現時点では、将来的にIoTに関連するであろう各種機器が生成する全データの9割が分析・活用されておらず、そのうち6割が生成された直後に価値を失っていると想定されるという。
こうした課題に対処するため、同社では今後、顧客やビジネスパートナーが自らのIoTソリューションに適用できる分析サービス「IBM IoT Cloud Platform Industries」、IBMのPaaS「Bluemix」の機能を活用できる「IBM Bluemix IoT Zone」、幅広い業種・業態のビジネスパートナーとの協業を図る「IBM IoT Ecosystem」といった3つの取り組みに注力していく構えだ。
今後のICT市場において、IoT分野が非常に有望なことは、もはや疑いのないところだ。米Cisco Systemsによると、IoTの対象となるモノの数は、2020年に2013年の5倍の約500億個に達すると予測。また金額ベースでは、米IDCが2020年のIoT市場規模について、2013年の2.3倍の3兆400億ドルに拡大すると予測している。
国産ベンダーはプレゼンテーションの仕方を見習うべし
こうした高いポテンシャルが見込まれるIoT市場に向けては、もちろん、IBMだけでなく、国産ベンダーをはじめ競合他社も積極的な事業への取り組みを図っている。筆者もさまざまなベンダーの事業説明会などで、IoT事業に向けたビジョンや製品・サービス、さらには具体的な活用事例を聞く機会が、このところ増えてきた。
ただ、IoTの定義が抽象的なこともあって、どのベンダーも売上高の目標や投資規模を数値として明確に示しづらいのが正直なところだろう。IoT事業に関する会見でそうした質問をしても「IoTをどう捉えるかで違ってくるので…」と、これまで具体的な数値を耳にしたことはなかった。
そうした中で、今回IBMが「今後4年間で30億ドル」とのIoT事業への投資額を明確に示した。しかも発表内容を見ると、顧客や株主へのメッセージもさることながら、ビジネスパートナーとのエコシステムづくりに相当分を費やすとの意思が感じられる。かねてIoT事業ではエコシステムの広がりが成功の決め手になると見られてきただけに、まさしく的を射た意思表示である。
競合他社の中でもとくに国産ベンダーは、こうした特定の事業への思い切った投資規模の発表を行うことがほとんどない。いうまでもなく、投資規模を明確にすることは、その事業に向けた経営の意思表示である。その意思を明確に見せるためにも、国産ベンダーもIBMのプレゼンテーションの仕方を見習うべきではないだろうか。
今回のIoT事業については、IBMだからこれだけの投資規模を打ち出せるとの見方があろう。ただ、単に投資規模だけでなく、それを何に使うのかを明確にすることが重要なのではないだろうか。それが、経営サイドの“顔”をはっきりと見せるということではないか。グローバルで事業を展開していくうえでも、国産ベンダーはこうした“自己表現”において、もっと積極的な姿勢を見せてほしいものである。