IBM Insight

BIツールや文書管理にもWatsonを組み込むIBMの「コグニティブ戦略」

鈴木恭子 2015年11月05日 08時00分

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 10月25日から5日間の日程で開催したIBMのプライベートイベント「IBM Insight 2015」(ネバダ州ラスベガス)。10月27日に行われたゼネラルセッションでは、モノのインターネット(Internet of Things:IoT)やクラウド環境による分析活用など、データ駆動型ビジネスの可能性が語られた。

 同社の顧客には、Boeingや地球外知的生命体探査(Search for Extra-Terrestrial Intelligence:SETI)プロジェクトチームといった超大規模システムを有する企業や団体からゲームアプリ開発を手掛けるHothead Gamesといったスタートアップ企業までが名を連ねる。セッション最初のゲストスピーカーとして登壇したBoeingでIT部門担当バイスプレジデントのNancy Bailey氏は、「社内で放置されている『ダークデータ』から価値を見いだすコツ」に焦点を当て、自社のデータ活用事例を紹介した。


Boeing IT部門担当バイスプレジデント Nancy Bailey氏

 Bailey氏は「意外かもしれないが、データ分析のカギを握るのは、データサイズではなくデータセットだ」と語る。同社では飛行ルート、エンジン回転数、パイロットの操作状況などを相関分析し、機体のメンテナンスや故障予測に役立てている。こうしたデータは社内で共有し、IT部門やデータサイエンティストだけでなく、現場の事業部門(Line Of Business:LOB)がビジネスの目的に応じてデータを分析できる環境を整えているという。

 「重要なのは、欲しいデータに簡単にアクセスできる環境だ。データ分析は意志決定されるすべてのプロセスに生かされるべきであり、IT部門はLOBのニーズに応える義務がある」(Bailey氏)

Cognos+Watson=最強の方程式

 Insight 2015の期間中、IBMはエンタープライズビジネスインテリジェンス(BI)ツールである「Cognos Analytics」をクラウド環境でも提供することを明らかにした。Cognos Analyticsは、データ分析に関するセルフサービス機能と業績(パフォーマンス)管理機能を備え、ウェブベースで10人から1000人までのユーザーに対応できる。

 IBMでは今回のクラウド対応で「ビジネスユーザー自身が主体的にデータを分析し、レポート作成、配信までが可能になる」としている。

Cognos Analyticsの特長。Watson AnalyticsでBIの精度をさらに向上させ、ビジネス部門でも簡単に利用できるようしたという
Cognos Analyticsの特長。Watson AnalyticsでBIの精度をさらに向上させ、ビジネス部門でも簡単に利用できるようしたという
Mark Lack氏
Mueller 分析戦略兼BI担当 Mark Lack氏

 Cognos Analyticsは新機能として「目的指向のモデリング環境」「コンテキストによる検索機能」「一元環境によるリポート作成」を備える。データ分析サービス「Watson Analytics」と連携し、入力した単語の利用目的を解釈し、データソースから使用するモデルを提示したり、コンテキストに沿った検索結果を表示したりできる。セッションではCognos Analyticsの導入予定ユーザーとして、屋根の建設資材販売を手掛けるMuellerの事例が紹介された。

 MuellerではすでにWatson Analyticsを導入し、構造化データと非構造化データを取り込み、自然言語で検索できるようになっている。同社の分析戦略兼BI担当のMark Lack氏は、「Watson Analyticsで得られた知見をCognosに格納した業績データと掛け合わせてダッシュボードに提供し、全社共通で情報共有できるようにした。この結果、今まで得られなかった洞察をもとに次のアクションにつなげることができる」と語る。

 Insightの期間中、IBMは文書の分類と内容把握を自動化する「IBM Datacap Insight Edition」も発表している。Watsonが備える画像処理、自然言語処理、分析、機械学習といった技術を利用し、文書のフォーマットと構造、ワード情報、数値情報の分析などからコンテキストを把握。どのコンテンツにアナリティクスを適用すべきかを特定するソリューションだ。同時に機械学習機能で、新しい文書タイプも継続的に学習する。ビジネスルールを適用することでユーザーは業務の優先順位を判断できるという。

Cloudantでデータベースの迅速な拡張性を確保

 クラウド環境で提供されるソリューションとして「Cloudant」の活用事例も紹介された。Cloudantは、Data Base as a Service(DBaaS)として提供されるNoSQLのデータベース。ベースとなっているのはオープンソースの「Apache CouchDB」で、インターフェースはRESTful APIを採用している。

Joel De Young氏
Hothead Games創業者/技術部門ディレクター Joel De Young氏

 Cloudantのユーザー事例として登壇したのは、モバイルオンラインゲームを手掛けるHothead Gamesだ。同社はスポーツ系のオンラインゲームを得意としているが、サッカーゲームの「Big Win Soccer」が「App Store」のスポーツカテゴリで1位になったことでダウンロードが集中。従来であればデータベースをチューニングして、ノード数を増やさなければならないが、Cloudantを利用することで、その必要は一切なかったと語る。

 同社の創業者で技術部門のディレクターを務めるJoel De Young氏は、「ゲームアプリの開発に集中するためにはデータに簡単にアクセスでき、(データベースの)管理に時間を割かれないこと。そして柔軟なスケーラビリティを持つシステムであること」と指摘し、Cloudantの優位性を強調した。

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