日本IBMは2月9日、グローバル・テクノロジー・サービス(GTS)事業の戦略説明会を開催した。GTS事業の注力分野や事業部の再編、最新サービスについて明らかにした。
日本IBMのVivek Mahajan氏
GTS事業は、ITサービスやアウトソーシング、メンテナンス、テクニカルサポートを提供し、企業における戦略的なITインフラの構築と運用を担う部門である。2015年のグローバルでの売り上げは前年比1%増の320億ドルで3四半期連続の成長となる。売上比率はIBM全社の約40%に及ぶという。
部分最適ではなく全体最適で企業のITインフラを支援
取締役専務執行役員 GTS事業本部長のVivek Mahajan氏は「IT業界の変化とともに、GTS事業も変革を続けている」と話す。
1990~2000年代を第1の変革、2000~2010年代を第2の変革、2010~2020年代を第3の変革に切り分け、第3の変革期にあたる現在は、ハイブリッドクラウドへの対応やグローバルプロセスの最適化と編成、先進的アナリティクスと自動化技術の採用、コグニティブコンピューティングを活用することで、エンタープライズITを実現する基盤技術が求められている。
IT変革の変遷(日本IBM提供)
IBMでは、「System of Record(SoR)」を利用し、「System of Engagement(SoE)」を増強する“ハイブリッド環境”が次世代エンタープライズITの主流になると考えている。SoRは統合基幹業務システム(ERP)や顧客関係管理システム(CRM)など従来型の基幹システム、SoEはモバイルやソーシャル、分析、クラウドといった新しいシステムと位置づけている。
「GTS事業はミッションクリティカルなITインフラとハイブリッドクラウドを統合したIT環境の実現を支援する。部分最適ではなく全体最適でITインフラのスピードと俊敏性を向上していく」(Mahajan氏)
GTSは現在、システム、モビリティ、レジリエンシ、ネットワーク、テクニカルサポート、クラウド、セキュリティの7つサービスをビジネスニーズにあわせて提供している。その中でも、モビリティとレジリエンシ、ネットワーク、クラウド、セキュリティの5分野については、特に注力していくという。
GTSが提供するサービス(日本IBM提供)
事業部を再編して顧客ニーズと市場動向に対応
GTS事業の変革として、顧客ニーズと市場動向に迅速に対応するため事業部を再編した。これまでは、「ストラテジックアウトソーシング(SO)」「インテグレーティッドテクノロジサービス(ITS)」「テクニカルサポートサービス(TSS)」という編成だったが、SOとITSを「インフラストラクチャサービス(IS)」に一本化した。これによって価値が高く、横展開の可能な拡張性のあるサービスを提供できるとしている。
組織の再編とともに、サービスを提供する人材の強化にも取り組んでいる。具体的には社内研修を積極的に推進し、顧客のビジネス変革に向けて価値と解決策を提供できるエキスパートを育成する。また、GTS事業内の社内ネットワーキングを促進するなどして従業員のエンゲージメントを向上する。
自動化テクノロジを導入することにより、サービスデリバリモデルも変革する。例えば、自己相関技術をイベントの相関付けとチケットの自動発行に用いることで、重大な10%のイベントを特定できるようになったり、サーバプロセスの自動化でファイルシステムがフルになった際のイベント処理を1件あたり100分改善したりといったことが可能になるという。
デリバリモデルの変革(日本IBM提供)
さらに、事業継続性や365日24時間のサポートなどの付加価値提供を目的として、サービスデリバリ拠点の最適化を図ると同時に、中国やインドをはじめとするオフショア、ニアショアの活用を検討していく計画だ。
企業のビジネス変革を支えるのは拡張性、柔軟性、制御性を持つITインフラである。ハイブリッドでオープンな環境に対応するITサービスをモジュラー化し、「Enterprise IT as a Service」として推進していく(Mahajan氏)(日本IBM提供)