富士通研究所は3月17日、工場の保守点検などで遠隔地から現場の全景が把握できる作業支援技術を開発した。
保守点検などの現場で、作業者が現場の様子をカメラで撮影。広範囲にわたる作業現場の全景がわかる3次元の合成パノラマ画面を作成し、拡張現実(AR)技術と組み合わせることで、遠隔地にいる支援者が現場の作業者に的確な指示を出せるようになる。
富士通研究所 ユビキタスシステム研究所 ユビキタスデバイスプロジェクト プロジェクトディレクター 沢崎直之氏
富士通研究所 ユビキタスシステム研究所 ユビキタスプロジェクト 主管研究員 岡林桂樹氏
熟練作業者が不足が問題となっていることから、この技術を使うことで、現場には若い担当者が出向き、熟練作業者が複数の現場を支援できる。熟練技術者不足を補うものになるとアピールしていく。
富士通研究所のユビキタスシステム研究所 ユビキタスデバイスプロジェクト プロジェクトディレクター 沢崎直之氏は「富士通研究所では、従来の技術中心から人間中心へとシフトし、より人間主体の活動を支援するための技術開発に取り組んでいる。今回、発表する新技術は、まさに人が活動する場所でのイノベーションを実現するもので、作業現場を支援する新たな価値を創出する技術となっている」と説明する。
カメラ視野の狭さや画像のブレがネック
今回の新技術は、技術力の高いベテラン作業員が不足しているという問題をカバーすることを狙い、ベテラン作業員が遠隔地から若手技術者を育成することで、現場作業者のスキル育成につなげていくことが技術開発のきっかけとなっている。
これまでにも同様の狙いで作られたシステムも存在していたものの、「カメラ視野の狭さ、画像のブレといったことがネックとなり、作業を指示する人は現場の状況がつかみにくかった。作業を支援する指示についても、指示したい場所が画面のフレーム外の場合、新たなやり取りが必要となるなど、作業が複雑化するといったことも問題点となっていた」(ユビキタスシステム研究所 ユビキタスプロジェクト 主管研究員 岡林桂樹氏)といった点がネックとなっていた。今回の新技術は、そうした問題点を踏まえて開発された。
遠隔作業支援システムのイメージ(富士通研究所提供)
まず、現場の様子は1枚の画像ではなく、複数の画像を撮影し、3次元画像生成技術でパノラマ合成して、作業現場の一部ではなく、全体を把握できる画像にする。その画像にタブレットに搭載されたセンサを使って、現場作業者の位置と向きを推定し、リアルタイムで支援者の画面に表示する。
支援者が指示する場合には、3次元画像で作業者の位置に連動したAR提示と指示対象に誘導して、的確な指示ができるようになる。
現場をタブレットのカメラで撮影する