富士通は3月9日、インドネシア共和国 北スラウェシ州 マナド市向けに構築した河川情報システムの実証実験を開始したと発表した。公共事業・国民住宅省マナド河川流域管理事務所(PUマナド河川事務所)と共同で3月18日まで実施する。
同システムは、独立行政法人 国際協力機構インドネシア事務所から委託され、日本国内での河川情報システム開発実績とノウハウを生かし、富士通が同社インドネシア現地法人と共同で構築した。
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同システムでは、AR(augmented reality)技術を導入してる。ARは、人間の五感で得られる情報にICTを利活用して得られるデジタル情報を重ね合わせ、人間の感覚を拡張、強化する技術。今回の実証実験では、マナド市内の河川流域1カ所にARマーカーを設置し、防災に役立つ精度の情報収集が可能かどうかを検証する。さらに、PUマナド河川事務所関係者による河川水位の変化の把握・共有が、河川管理における状況判断に有効かどうかを検証する。
AR技術を活用した水位計測(富士通提供)
同システムは、観測者がスマートフォンの水位計測アプリを使って計測した水位と写真、観測者が入力した周辺の状況情報を、富士通のデータセンター内に集約、蓄積して活用する。各観測地点の水位変化を可視化したグラフとともに、地図上にプロットして提供する。
スマートフォンアプリには、富士通のAR統合基盤製品「FUJITSU Software Interstage AR Processing Server」を活用している。観測者がマナド市内の河川流域に設置されたARマーカーをスマートフォンのカメラで読み込むと、河川の写真上にスケールを重畳表示し、画像の水面をタップするだけで水位を数値化できる。
実証実験で集約された河川情報は、PUマナド河川事務所職員のみに共有されるが、富士通側は、今後同システムがマナド市に本格導入されて、情報が市民に公開されるようになれば市民の自発的、自律的な防災・減災活動にも役立つと期待している。
また、今後、継続してデータセンターに情報を数年蓄積することでビッグデータ分析が可能となり、河川の災害予測や河川の補強・改修計画にも役立てるという活用方法も考えられるという。富士通では同システムの有効性と効果について調査結果を報告書にまとめ、3月末にJICAインドネシア事務所に報告する予定。