大容量通信を低コスト化する光送受信方式を2019年に実用化--富士通研

NO BUDGET 2016年03月24日 07時15分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 富士通研究所と富士通研究開発中心有限公司(FRDC)は3月22日、大都市圏内に点在する複数のデータセンター間を大容量かつ低コストで接続するための、1波長あたり毎秒400ギガビット(Gbps)光送受信器に向けたデジタル信号処理の基本方式を開発したと発表した。

 富士通研究所では今後、シリコンフォトニクス技術と組み合わせた検証を進め、400Gbps光送受信器として2019年の実用化を目指す。

 5GモバイルネットワークとIoTの進展により、利用者がより多くの機器やデータにアクセスしながら、今よりさらにリアルタイム性の高いサービスを受けられる時代が数年以内に訪れるという。そのための基盤として、大都市圏に複数のデータセンターを配置し、連携させる分散コンピューティング基盤の開発が進められている。

(富士通研究所提供)
分散コンピューティング基盤を実現する都市圏データセンター間ネットワーク(富士通研究所提供)

 これら複数のデータセンターを結ぶ光ファイバーネットワークには、現在主流である1波長あたり100Gbpsのデータ送受信にとどまらず、200Gbps、さらには400Gbpsと大容量化が求められており、その実現に向けた研究開発が進められている。

 この1波長あたり400Gbpsの光通信速度については、これまで用途ごとに最適化、選別された高価な部品を使うことで実現してきた。

 光送受信器の構成部品については、より安価な部品の利用や、別途開発が進められているCMOS技術やシリコンフォトニクス技術を用いることによる低コスト化が期待される。だが、用途ごとに最適化、選別した高価な部品と比較すると性能が低くなり、性能にばらつきも発生するため、そのままでは、データセンター間の通信距離として求められる100キロメートル程度の伝送距離を実現できなかった。

 富士通研究所とFRDCは今回、こうした課題に対し、送信側から独自の基準信号を送信し、受信側でこの信号を用いてひずみを効果的に補正する新しい通信方式を開発し、160キロメートルの無中継伝送実験に成功。同技術により、光送受信器における構成部品の特性のばらつきや伝送路によるひずみの影響を高精度に補正することが可能になり、安価な光送受信部品を用いて1波長あたり400Gbpsの送受信を実現した。

 同技術は、低コスト化が期待されるシリコンフォトニクス技術を用いた光送受信部品の集積化にも適用可能であり、5GモバイルネットワークやIoTサービスを支える次世代分散コンピューティング基盤の構築に貢献するという。

 開発した方式の特徴は以下の通り。

独自の基準信号を用いた新しい通信方式

 従来は、送信器の出力信号を観測しながら信号ひずみを補正することによって、送信器として可能な限り品質の良い信号を送信することが一般的だった。しかし400Gbpsにおいては、求められる処理精度が高くなるため、送信器側で補正することが難しくなり、部品、回路コストが増大する。そこで、独自の基準信号を送信することにより、受信器側で送信器の信号ひずみを補正可能とする新しいデジタル信号処理方式を開発した。

受信器における新しい補正技術

 従来の光受信器では、伝送路のひずみを補正してから信号検出のための位相再生処理を行う必要があったが、送信器のひずみの影響が大きい場合は補正が困難だった。今回、独自の基準信号を用いることで伝送路のひずみを補正せずに位相再生を可能とする技術を開発。同技術により受信器は、まず位相再生と送信器のひずみを補正し、その後、伝送路のひずみを補正することで、大きくひずんだ信号からでも変調したデータの再生を可能にする。

光送受信器の構成(富士通研究所提供)
光送受信器の構成(富士通研究所提供)
送信器ひずみ補正の効果(富士通研究所提供)
送信器ひずみ補正の効果(富士通研究所提供)

 この技術を用いることで、都市圏内に配置したデータセンター間の広帯域ネットワーク構築に十分な距離を想定した160キロメートルの光ファイバで、400Gbps信号の伝送実験に成功した。

 課題であった低コスト部品などを利用した場合の特性ばらつきの補償に対しても適用できる。これにより、次世代の分散コンピューティング基盤を構成する1波長あたり400Gbpsの光送受信器の低コスト化が実現できるとしている。

(富士通研究所提供)
開発技術を適用した160キロメートル無中継伝送実験システムの構成(富士通研究所提供)

ZDNet Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んだ方に

関連ホワイトペーパー

連載

CIO
デジタル“失敗学”
コンサルティング現場のカラクリ
Rethink Internet:インターネット再考
インシデントをもたらすヒューマンエラー
トランザクションの今昔物語
エリック松永のデジタルIQ道場
研究現場から見たAI
Fintechの正体
米ZDNet編集長Larryの独り言
大木豊成「仕事で使うアップルのトリセツ」
山本雅史「ハードから読み解くITトレンド放談」
田中克己「2020年のIT企業」
松岡功「一言もの申す」
松岡功「今週の明言」
内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」
林 雅之「デジタル未来からの手紙」
谷川耕一「エンプラITならこれは知っとけ」
大河原克行「エンプラ徒然」
内製化とユーザー体験の関係
「プロジェクトマネジメント」の解き方
ITは「ひみつ道具」の夢を見る
セキュリティ
企業セキュリティの歩き方
サイバーセキュリティ未来考
ネットワークセキュリティの要諦
セキュリティの論点
スペシャル
ざっくりわかるSNSマーケティング入門
課題解決のためのUI/UX
誰もが開発者になる時代 ~業務システム開発の現場を行く~
「Windows 10」法人導入の手引き
ソフトウェア開発パラダイムの進化
エンタープライズトレンド
10の事情
座談会@ZDNet
Dr.津田のクラウドトップガン対談
Gartner Symposium
IBM World of Watson
de:code
Sapphire Now
VMworld
Microsoft WPC
Microsoft Connect()
HPE Discover
Oracle OpenWorld
Dell EMC World
AWS re:Invent
AWS Summit
PTC LiveWorx
吉田行男「より賢く活用するためのOSS最新動向」
古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」
中国ビジネス四方山話
ベトナムでビジネス
日本株展望
企業決算
このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]