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ITの世界ではクラウド活用が一般的になりつつあるのに対し、日本のデータセンターは首都圏、特に東京に一極集中しているのが現状だ。クラウドでは海外のデータセンターを知らずに利用している現状に対して、あきらかにコストの高い首都圏に集中していることはどのような背景で、どのように変化するのか、興味のわくところである。
官公庁などを対象にしたITコンサルティングを手掛けるNCRIの会長で、ネットコンピューティングアライアンス(NCA)の代表である津田邦和氏は、この「データセンターの地方分散化」というテーマに強い関心を持ち、多くの有識者との議論を展開している。
NCRI 会長兼代表 津田邦和氏。クラウドやデータセンターに関して、国や自治体にさまざまな助言をするなど影響力を持つ。
さくらインターネットが北海道の石狩にデータセンターを建設したが、津田氏はこれが1つのモデルと話す。データセンターの地方分散化には、どのようなメリットがあるのか、またどのような課題があるのか。今回、経済産業省の情報処理振興課の柳田大介氏と津田氏が、データセンターの地方分散化をテーマに対談した。(以下、文中敬称略)
津田 前提として、現在、データセンターの6割から7割が首都圏に集中しています。さらに言えば、首都圏より南西には25%、北の方は5%未満というのが現状です。この状況に対し、地方あるいは寒冷地への分散化というテーマがあります。これに関して議論したいと思います。
現在のクラウドは、1995年あたりからASPとして普及が始まり、その位置づけはだいぶ変化しています。先進国においてはほとんどの人が触れる状態になっており、エンターテインメントから企業活動、教育、公共分野にまで、広範囲にわたる社会基盤となりました。柳田さんはクラウドのテクノロジの進展と、ITやデータセンターの使われ方の変化について、どうとらえていますか?
柳田 クラウドに関しては、従来のASPの考え方と大きく変わっていないと思います。テクノロジの進展としては、ハードウェアに近い基礎部分は土台ができてきたと感じています。クラウドを作れるようなツールが販売されていますし、OpenStackをはじめとしたオープンな技術も機能が充実してきました。
経済産業省 情報処理振興課 柳田大介氏
例えば、仮想環境の話ではSDNやストレージなど、大きいところは技術的に成熟しつつあり、本格的に活用されるフェーズに入ってきています。しっかりと理解されれば、世の中でもっと利用が広がっていくのが自然な流れだと思います。
米国の例では、情報システムのかなりの部分がクラウドに移っていて、7割近くがクラウドの基盤に移っているという統計もあります。しかし、これに比べて日本ははるかに低く、クラウドの利用が例えばIT市場全体でみると金額的にまだ2~3%程度です。本格的に普及しているかというと、まだまだであると私たちはとらえています。