青い森クラウドベース(青森県弘前市)は4月21日、雪氷を使って冷却する新発想のデータセンター「青い森クラウドベースデータセンター」を青森県六ケ所村に建設し、11月に竣工すると発表した。サービス開始は2016年1月を予定している。
現地特有の季節風「やませ」が吹き付ける冷涼な気候を逆手に取り、雪氷と外気を取り入れた冷却技術により、冷房を極力使わないようにして電気代を抑え、電力使用効率(Power Usage Effectiveness:PUE)1.2未満というあまり例のない省エネ性を実現する。
データセンターの安全祈願祭「鍬入れの議」。左から青い森クラウドベースの長内陸郎社長、青森県の佐々木郁夫氏副知事、六ケ所村の戸田衛村長、富士電機執行役員 産業インフラ事業 本部長の日下高氏
青い森クラウドベースの専務取締役の宮本啓志氏は「Googleなどのインターネット企業も1.2を実現しているかもしれないが、あくまでも自社向けの構成。われわれは、さまざまな利用企業を前提にした汎用的な構成での数値だ」とアピールする。PUEは一般に、首都圏の最新型のデータセンターでPUE1.5、旧型では2.0くらいと言われている。
雪氷冷房とは、冬の間に雪山を作り、それをブルーシートで覆うことで断熱、保温し、7~9月の真夏の時期に雪山から溶ける冷水を空調に利用するもの。外気冷房は、文字通り冷たい外気を利用した冷房で、さらに、粉塵や湿気の影響を受けない間接外気冷房方式を採用した。
六ケ所村の夏季の気温は東京よりも7度ほど低く、外気冷房に適した外気温20度を下回る時間が年間の9割以上もあるという。
冬の間に雪山を作り、それをブルーシートで覆うことで断熱、保温し、7~9月の真夏の時期に雪山から溶ける冷水を空調に利用する
冷却と高密度性によるダブルの省エネ効果
また、高密度性も特徴として打ち出す。最近のサーバは、複数コアを搭載するCPUの登場などにより1台あたりの処理能力は上がっている分、消費電力が高くなっている。そのため、ラックあたり2kVAという標準的な供給電力がボトルネックになり、1つのラックに搭載するサーバ数が少なくなる傾向があるという。見え方としては「スカスカ」という状況だ。
新データセンターでは、ラックあたり定格6kVAから20kVAにするため、ラックあたりより多くのサーバを搭載する高密度環境を実現できるという。
高密度設計を可能にする
青い森クラウドベースデータセンターの敷地面積は1万2000㎡、鉄骨造1階建てサーバ棟は80ラックごとのモジュラー設計で、11月のオープン時は2棟160ラックが完成している予定。2期工事で4棟320ラックまで増設する。
新耐震基準に準拠し、サーバ棟は床免震システムを採用、諸仕様はJDCC(日本データセンター協会)Tier3以上に準拠する。当初、ハウジングサービス、ホスティングサービス、クラウドサービスを提供する予定だ。
雪氷と外気による冷房と、高密度設計の2つの方法により、大幅なコスト削減効果を実現する考えだ。特に、外気冷房と雪氷冷房の併用は「世界でもあまり例がない」(宮本氏)ことで、経済産業省の平成26年度「中小企業等省エネルギー型クラウド利用実証支援事業・データセンターの地方分散化に資する省エネ性向上の実証」事業に採択されている。
宮本氏は、新データセンターの用途について、「東北と青森の産官学のクラウド拠点」「クラウド事業者やソリューションプロバイダーのデータセンター」「大都市圏のエンドユーザー企業のBCPやディザスタリカバリを目的としたバックアップ拠点」の3つを挙げる。
NTT PCの取締役を務める中島正樹氏は「メインサイトから500㎞以上離れるべきとの要請が強くなっているため、(東京から600㎞離れた六ケ所村のセンターを)顧客企業向けにBCP拠点として提供したい」とする一方、「データセンターに出向きたい顧客には不向きかも知れない」と述べた。