日立、複数データセンター間の通信を高速化する中核技術を開発

NO BUDGET

2015-03-10 11:10

 日立製作所は3月9日、多拠点に分散したデータセンター間の通信や、大規模データセンター内のネットワークを対象とした大容量、高信頼ネットワーク技術を開発したと発表した。

 実際のフィールドに敷設した20kmの光ファイバを用いた試験用プラットフォームにおいて、データセンターのネットワークを想定した光伝送とシステムの連携実験を実施し、実用性を確認した。


開発技術を適用したデータセンター(日立提供)

 開発された技術の概要は以下の通り。

データセンター内のデータ回線を低遅延で省電力に集約する技術

 データセンター内の各サーバやストレージなどから出力されるデータ回線をビットごとに順番に1本の回線に集約し、各送信先に自動的に振り分ける技術を開発。データを集約する際に、あらかじめビットごとに送信する順番と送信先をひも付けし、転送後に自動的にデータを各送信先に振り分けることで、パケット通信における複雑な処理を不要とし、遅延を軽減した。

 この技術では、パケットよりもさらに細かいビット単位で1本の回線に集約するため、各種プロトコルの影響を受けず、サーバ向けLANやストレージ向けネットワークをまとめて集約できるようになる。データセンター内のネットワークをシンプルに構築することで、データセンター全体の処理性能向上に加え、省電力効果も期待できる。

400ギガビット/秒級でデータセンター間の通信を実現

 光の波の振幅(強さ)と位相(タイミング)を少しずつ変えた16個の状態で情報を表現する多値変調を実施することで、1度に4ビットのデジタル情報を送信することが可能な16値多値光通信方式に対応。10~40キロメートルの中距離通信用の光送受信器を試作した。

 光の明滅による2値変調に対し、1波長あたり従来比4倍となる100ギガビット/秒のデータ送信を可能にした。さらに、これを4つの異なる光波長の信号で集約化し送信することで、1本の光ファイバあたり400ギガビット/秒のデータ通信を実現。試作した光送受信器では、構造が簡素な光検出器を使って多値信号を受信する遅延検波方式を採用し、リアルタイムでの動作を確認した。

マルチコア光ファイバを用いた冗長化技術

 マルチコアファイバ内の伝達路の一部を予備経路として残しておき、災害時の通信断絶を瞬時に検出し、データを予備伝達路へと高速に切り替える技術を開発。現在の一般的な光ファイバは、光信号を伝達する経路のコアがファイバ1本につき1本のみで、災害による断線で通信が遮断されやすいことから、コアを複数持つマルチコアファイバの実用化に、各機関で取り組んでいるという。

 日立では、7本のコアを内包するマルチコアファイバを用い、一部のコアを平常時には予備のコアとするとともに、1本のコアを通信断絶の検出、通信装置間での通信経路切替え制御信号の交換に常時使用する冗長化技術を開発した。これにより、通信遮断が生じたコアの通信を、他のファイバの予備のコアに迅速に振り分け、災害時における通信路の遮断を回避する。

 これらの技術の実用性を検証するために、日立は札幌市に敷設された20キロメートルの光ファイバを用いて、データセンター内外のネットワークを模擬した試験用プラットフォームを構築し、今回開発した3つの技術を連携させた実証実験を行った。

 その結果、回線を集約する際のデータ転送遅延を1マイクロ秒以下に低減、20キロメートルの通信距離で従来比4倍となる400ギガビット/秒級の光通信、マルチコアファイバによる経路の高速切替え動作などを確認し、開発技術の実用性を確認した。

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