独立行政法人の情報通信研究機構(NICT)とルネサス エレクトロニクスは3月4日、現在のルータの宛先検索と同じ仕組みを実装した光パケットヘッダ処理装置を開発し、IPアドレスを利用した光パケット交換実験に成功したと発表した。現在より高速かつ低消費電力なネットワークの中核装置として光パケット交換システムの実用化を加速できるという。
光パケット交換とは光パケットを電気信号に変換せず、光信号を切り替えるスイッチで転送し、従来より多くの情報を転送可能にする技術。利用には光信号処理を必要とする。
開発された光パケットヘッダ処理装置は、“光パケットの宛先検索”と“通信トラフィックの統計情報蓄積処理”の2種類のLSIを搭載しており、光パケット交換システムを省エネ化できるという。
今回の実験では、宛先検索だけでなく、光パケットの交換に必要な宛先情報に現在のネットと同じアドレス体系を利用しており、ネットとの親和性が高く、大規模ネットワークへの対応が可能であるため、光パケット交換システムの実用化が加速できるとアピールしている。
今後NICTは、ネットワークの経路制御機能について研究開発を進め、光パケット交換システムの機能向上を図る。ルネサスは、光パケット交換システムを組み込んだ、ネットを高速かつ低消費電力で支えるというLSIを新たに開発した。両者はIPv6への実用化を視野に、宛先検索機能の高度化や経路情報処理の効率化による一層の省電力化を進めるという。2020年の実用化を目指す。
現在のネットでは、光ファイバで伝送された光信号が、ネットワークの分岐点であるルータで、すべて電気信号に変換され、宛先別に振り分けられ、再び光信号に戻されて光ファイバで伝送される。宛先別振り分けのために光電変換を繰り返すことと、増大し続ける情報量に対応するための高速交換処理が必要であるため、ICT機器の全消費電力の7分の1を占めるというルータの省電力化が課題だったと説明している。
こうしたことから、光電変換せずに光信号のまま交換処理する光パケット交換システムの研究開発が進められている。一方、パケットを宛先別に振り分けるための宛先検索処理やパケットの種類や量を蓄積する統計情報蓄積処理、パケット伝送の経路制御などのネットワーク制御処理が複雑であるという課題があった。NICTでは、ルネサスと連携し、ネットワーク管理を簡便化するための制御処理を研究開発してきたという。