WSTS(世界半導体市場統計)日本協議会は、6月7日、世界半導体市場統計春季予測を発表した。
これによると、2015年の世界半導体市場は、ドルベースで、前年比0.2%減の3351億6800万ドルの実績となったほか、2016年も前年比2.4%減の3271億8000万ドルと、2年連続でのマイナス成長を見込んでいる。2014年には、2011年以来の調査で過去最大の成長率となる9.9%増となっていたが、一転した格好だ。
だが、2017年は、前年比2.0%増の3337億800万ドル、2018年は2.2%増の3409億3800万ドルとプラスに転じると予測。2015年~2018年にかけての年平均成長率は0.6%増と微増になると予測した。
WSTS日本協議会 運営委員の近森謙志郎氏
WSTS日本協議会の運営委員である近森謙志郎氏(ローム)は、「2016年の半導体市場は、世界各国において成長には力強さが欠けている。スマホ市場の成長が鈍化していること、PC市場が縮小していることが要因。さらに世界の景況感が悪く、個人消費に弱さがある。自動車向けは好調であるが、半導体需要の6割強をPCとスマホが占めており、自動車向けの成長では埋め切れていない」と解説した。
製品別にみると、主にPCとスマホ向けに使用されるICだけがマイナス成長となっていること、ICのなかでも、PCとスマホに使われることが多いロジックおよびメモリのカテゴリでマイナス成長となっている。
2016年における製品別の市場予測は、ディスクリートが前年比0.5%増の187億ドル、オプトは同1.8%増の339億ドル、センサーは7.6%増の95億ドル、ICは3.4%減の2651億ドルとしている。ICのうち、メモリは前年比10.2%減の693億ドル、ロジックは同2.5%減の885億ドルとマイナス成長だが、マイクロは同0.6%増の617億ドル、アナログは同1.0%増の457億ドルと微増を予測している。
だが、2017年以降は、メモリ、ロジックも微増すると予測。それに伴いICもプラスに転じ、半導体市場全体でもプラス成長に転換すると予測している。
WSTS日本協議会の近森運営委員は、「スマホは新興国などを中心に販売台数が増加することに加えて、自動車向けのICで堅調な伸びが見込まれる。景気回復による設備投資などによる底上げも期待したい。だが、PC向けは減少することになると予測しており、半導体市場を牽引するようなものが見当たらない」としたほか、WSTS日本協議会の運営委員である草間宏貴氏(ルネサス エレクトロニクス)は、「自動車が押し上げ要素と期待していたが、日本および東南アジアでの自動車販売が不振であること、今後も中国での減税終了後の動向が読みにくいこと、米国の経済成長の落ち着きなどの懸念要素もある」とした。
WSTS日本協議会 運営委員の草間宏貴氏
2017年の製品別予測は、ディスクリートが前年比2.7%増の192億ドル、オプトが4.9%増の355億ドル、センサが3.7%増の98億ドル、ICが1.5%増の2651億ドル。ICのうち、アナログが3.1%増の470億ドル、マイクロが1.0%増の623億ドル、ロジックが0.2%増の887億ドル、メモリが2.6%増の711億ドルと予測。
また、2018年の製品別予測は、ディスクリートが前年比2.7%増の197億ドル、オプトが3.4%増の367億ドル、センサが3.1%増の101億ドル、ICが1.9%増の2743億ドル。ICのうち、アナログが2.8%増の484億ドル、マイクロが1.6%増の633億ドル、ロジックが1.1%増の897億ドル、メモリが2.6%増の729億ドルと予測した。
一方、日本市場については、2015年は、円ベースで、前年比2.3%増の3兆7651億円とプラスになったものの、2016年は前年比6.3%減の3兆5278億円とマイナス成長を予測した。
「日本市場においては、熊本地震の影響は短期的にはあるものの、年間需要においては大きな影響はないとみている。だが、日本の景況感が弱含みとなっており、それがマイナス成長の予測につながっている」(WSTS日本協議会の近森運営委員)とした。
だが、設備投資の増加などへの期待もあり、2017年は前年比1.1%増の3兆5676億円、2018年は1.7%増の3兆6298億円とプラスに転じると予測した。
WSTSは、加盟している世界48社の半導体メーカーが自主的に統計を行うための機関であり、加盟会社の半導体販売額、販売数量の実績値を、製品別、地域別に同一分類基準で毎月集計している世界で唯一の統計となっている。