三国大洋のスクラップブック

自動車メーカーは半導体開発でアップルにかなわないとの指摘

三国大洋

2015-12-23 07:30

 Samsungが自動運転車(ロボットカー)向けの部品を扱う新事業を立ち上げると12月初めに発表して、この話題が当方の定点観測している英語媒体でもわりと大きく取り上げられていた(*1)。

 この分野のビジネスにいわゆる「IT関連の大手企業各社」が何らかの形で関わろうとしている現状を考えると、サムスンのこの動きはそれほど意外なことでもない……そんなふうに思いながらWSJの記事を読み進めていたら、ちょっと気になる一節にぶつかった。

 「Hyundai Motorも、いわゆるスマートカー向けとなるコンピュータチップやセンサ類の自社開発を検討している」という一節で気になって検索してみると、「8日にソウルであった集まりで、Hyundaiの幹部がそう発言した」などとするBloombergの記事が見つかった(*2)。

 またBloomberg記事中には、「Hyundaiは今のところ、ロボットカー関連の技術を系列会社や他のサプライヤーから購入」ともある。汎用品では解決しづらい何かの課題があるのか、あるいは重要すぎて他社には任せられない部分とHyundaiが認識したのか。いずれにせよ、ここでも、業界の境界線がぼやけてある種の「異種格闘技」になりつつあるのか、などと感心していた。

 なお、韓国勢の動きが比較的詳しく伝えている中央日報日本語版記事の中には『サムスン、現代車、LG副会長3人の「スマートカー三国志」』や『サムスン「スマートカー、車体以外はすべて作る」』といったどことなく威勢のいい見出しのものもあって面白い(内容もなかなかタメになった、*3)

 ところで。

 こういった話を見聞きしていていつも思い出すのが、「ある意味規模の勝負、体力勝負のチップ開発となったら、自動車メーカーではAppleに太刀打ちできない」などとする内容が書かれたあるエッセイ(*4)。

 今年(2015年)秋に出ていたもので、これを書いたSteve Cheneyなる人物のプロフィール欄には「もともと電気工学関連のエンジニアやプログラマ」「GoogleとApple、それにベンチャーキャピタル会社で働いた経験あり」「Estimoteの共同創業者」とある。EstimoreはBluetooth接続するビーコン端末のメーカーとして一時よく見かけた名前だ。

 Cheneyのこのコラム、見出しは「Appleのプラットフォームが持つ、誰にも乗り越えられない優位性」(”On Apple’s Insurmountable Platform Advantage”)というもの。プラットフォームというと、ソフトウェアやアプリなどをつい思い浮かべてしまうが、このコラムで主に注目されているのはハードウェアの方。文中には「A9プロセッサ」「Samsung」「TSMC」といった言葉も出てくるので、時期的にちょうど「iPhone 6s/6s Plus」が発売されたすぐ後――「TMSC製とSamsung製でパフォーマンスが異なる」といった話が話題になり、それに刺激を受けて書かれたものにも思える。

 Steve Ballmerが「iPhoneがそれなりに大きな市場シェアを抑える見込みはまったくない。ノーチャンス」などと言っていたころ(2007年当時)に、Steve Jobsは後に「Ax」シリーズとなるプロセッサ(SoC)の自社開発を目指してチームづくりに乗りだしていた……といった指摘もあって面白いが、あまり昔の話をしてもしかたがないので、現在の自動車関連の事柄に話を絞る。

 この文章で特に気になる点を2つ挙げると、1つはプロセッサ開発に関わる規模の問題についての指摘、そしてもう1つは「プロセッサ開発分野のいちばん優秀な人材は今、IntelでもQualcommでもなく、Appleで働きたがっている」などとする一節。

 人材云々については真偽の確かめようもないが、Aシリーズチップが性能(消費電力あたりの処理能力のことか)でIntel製品を上回っていることや、Apple製品が他社のつくる製品よりも格好良いと見なされていることなど、割ともっともらしい根拠が並んでいる。

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