本記事の要点
- 「Dynebolic」は10年の休止期間を経て復活し、無料でダウンロードして使用できるようになった。
- マルチメディアの制作に必要なものがすべて備わっている。ライブインスタンスとして動作するため、ポータブルであり、デフォルトのOSに一切変更を加えない。
- WYSIWYGなので、他のアプリケーションをインストールする必要がない。
特定のタスク用に開発された「Linux」ディストリビューションは数多くある。デスクトップ、サーバー、ファイアウォール、ルーター、ゲーム、コンテナー、ファイルサーバー、フォレンジック、侵入テスト用などのディストリビューションがあるほか、クリエーターの作業を支援するために特別に開発されたディストリビューションもある。
そのようなディストリビューションの1つが「Dynebolic」だ。10年前に人気が高まり、ちょうどその頃に開発が終了したが、Dynebolicが好きだった人にはうれしいことに、このディストリビューションが帰ってきた。
公式発表には次のようにある。「10年の歳月が流れ、『Devuan 5』(『Daedalus』)、ライブブート、Linuxカーネル6.8シリーズをベースとする全く新しい『Dynebolic 4.0』になって戻ってきた」
IT業界で10年は長い時間だが、RastasoftはDynebolicの復活を確信している。Dynebolicは「KDE Plasma」デスクトップを活用することで、マルチメディア制作に特化したポータブルでクリエイティブなOSとなった。制作作業に必要なオーディオツールやビデオツールが豊富に用意されている。
しかし、「ポータブル」とはどのような意味なのだろうか。Linuxを使ったことがある人なら、「ライブ」ディストリビューションという言葉を聞いたことがあるはずだ。ライブディストリビューションでは、OSとそのアプリをシステムのRAMから実行できる。OSをインストールする必要がないため、ハードドライブには何一つ変更が加えられない。ライブディストリビューションなら、Linuxをテスト用に持ち出すことができ、終了後にマシンを再起動して、USBドライブを取り外せば、元のOSに戻して起動することができる。
ライブディストリビューションはLinuxでは一般的で、かなり前から使用されている。Dynebolicがライブディストリビューションを選択したことで、誰もがDynebolicを起動してマルチメディアプロジェクトを作成し、外部ドライブに保存できるようになった。作業が完了したら、マシンを再起動して、インストールされているOSに戻すことができる。
Dynebolicは外出先でのクリエイティブワークステーションだと考えればいい。友人の家を訪れて、Dynebolicを友人のPCで起動し、必要な作業を実行して保存した後、再起動すれば、コンピューターが元の状態に戻る。
さらに素晴らしいことに、Dynebolicは100%無料のソフトウェアであり、料金がかからない。
Dynebolicは自己完結型のOSであり、追加で何かをインストールすることはできないため、必要なものがすべて備わっていなければならない。幸い、ストリーミング、オーディオ、ビデオ、グラフィックス、パブリッシング用に以下のようなツールが搭載されている。
- 「Ardour7」 - デジタルオーディオワークステーション
- 「Audacity」 - サウンドエディター
- 「Butt」 - ストリーミングツール
- 「FFADO Mixer」 - FireWireオーディオミキサー
- 「HDSPConf」 - Hammerfall DSP制御アプリケーション
- 「JAMin」 - JACK Audio Masteringインターフェース
- 「Kdenlive」 - ビデオエディター
- 「Mixxx」 - デジタルDJインターフェース
- 「OBS Studio」 - ストリーミング/レコーディング
- 「QJackCtl」 - JACK制御
- 「soundKonverter」 - オーディオファイルコンバーター、CDリッパー、ReplayGainツール
- 「TiMidity++」 - MIDIシーケンサー
- 「VLC」 - メディアプレーヤー
- 「darktable」 - 仮想ライトテーブルと暗室
- 「GIMP」 - 画像エディター
- 「Inkscape」 - ベクターグラフィックエディター
- 「Scribus」 - ページレイアウト
- 「Konqueror」 - ウェブブラウザー
- 「Thunderbird」 - メール
搭載されていないアプリケーションの1つは、オフィススイートだ。これは、クラウドを使用して生産性アプリケーションにアクセスすることもできるので、問題にはならない。
筆者はDynebolicでのコンテンツ作成を楽しんだ。Audacityですぐに作業を開始して、オーディオを簡単に作成できる。より高度なオーディオのニーズについては、JACKとArdour7がある。いずれも強力なツールだ。
ただし、1つ注意してほしい。それは、作業を保存する外付けドライブが必要になることだ。Dynebolicはライブディストリビューションであるため、保存した作業内容は、再起動すると失われる。作業内容はいつでもDynebolicのファイルシステムに一時的に保存でき、後から一部またはすべてのファイルをクラウドストレージアカウントにアップロードすることができる。これは素晴らしいオプションになるだろう。ただし、マルチメディアファイル(特にビデオ)はサイズが大きくなることがあるため、十分なストレージ容量のあるクラウドアカウントが必要になることには留意したい。
Dynebolicは、マルチメディアワークステーションに対する素晴らしい取り組みだ。100%ポータブルになり、システムのハードドライブにインストールできないため、OSが期待どおりに機能することを確信しつつ、携帯性に優れたクリエイティブツールを利用できる。
Dynebolicの最新ISOをダウンロードして、起動可能なUSBドライブを作成すれば、このクリエイティブワークステーションを必要に応じてどこででも使い始めることができる。
提供:Screenshot by Jack Wallen/ZDNET
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。