日本製鋼所の横浜製作所が仮想環境と物理環境のバックアップ体制を統合した。arcserve Japanが1月5日に発表した。
横浜製作所は、2016年上半期に仮想環境の更新時期を迎えており、バックアップ体制の見直しを検討していた。同所は、レーザープラズマ関連装置や樹脂加工機械の製造などにかかわる3次元図面データや資料動画などをデジタル保存している。
これらのバックアップデータは、これまで、北海道室蘭製作所に遠隔地保管しており、万が一、横浜がシステムダウンした場合は、室蘭のデータを横浜へ戻してリストアする仕組みとなっていた。
しかし、室蘭製作所でシステムを起動させて横浜製作所の事業を継続させる体制は確立できておらず、事業継続計画(BCP)に課題を残していた。既存のバックアップソフトウェアはリストアに多くの工数を要したほか、ライセンス費用に加え、データ転送容量による従量課金制のため保守料が高額となり、コスト面でも大きな負担となっていた。
横浜製作所は、オープンソースを含めた仮想バックアップ製品を調査し、単一のソフトウェアでデータバックアップと遠隔地でのシステム起動(仮想スタンバイ)が可能で、設定作業もシンプルにできることから「Arcserve UDP」を採用した。同所は、選択理由の1つとして、同製品が仮想環境だけでなく物理環境のバックアップまでカバーでき、情報システム全体のバックアップ環境がほぼ一元化できるようになるメリットを挙げている。
横浜製作所は新しいバックアップ環境の構築を2016年6月下旬にスタートさせ、同年8月には本稼働を開始している。現在、仮想環境と物理環境を合わせて合計13Tバイトのデータを重複排除しながら日次ベースでバックアップし、完了したサーバ単位で室蘭製作所へと送信している。仮想スタンバイを利用した室蘭製作所でのシステム起動はすでに数回実施しており、15分程度で環境が立ち上がることが確認されている。
arcserve Japanによると、2016年11月時点で横浜製作所はバックアップの作業工数やコストを従来の5分の1程度に抑えられたとしている。Arcserve UDPは、仮想と物理それぞれの環境が混在するシステムで、データを一元的に保護できる集中管理機能を提供する。また、システム環境全体にわたるバックアップデータの重複排除機能、遠隔拠点への自動転送機能、災害時にシステムを即時に利用できる仮想スタンバイとインスタントVM機能などを持つ。