Intelの 「アクティブ・マネジメント・テクノロジー」(AMT)に存在するセキュリティ上の問題により、攻撃者はノートPCのログインを迂回(うかい)し、バックドアを仕掛けることで、遠隔地から該当PCにアクセス、操作できるようになる。Intel AMTは機器の監視やメンテナンスを遠隔地から実行可能にする管理者向けプラットフォームだ。
この問題の詳細がF-Secureの研究者らによって明らかにされた。それによると、クリーンな機器であってもわずか数十秒の攻撃で、BIOSのパスワードや、「Trusted Platform Module」(TPM)のPIN、ログイン認証情報がバイパスされるほか、ハードディスク暗号化技術「BitLocker」も無力化される可能性があるという。
F-SecureのシニアセキュリティコンサルタントであるHarry Sintonen氏は、「攻撃の実行方法は驚くほど簡単に見えるが、その潜在的な破壊力は信じ難いほど大きい。攻撃者は実際のところ、最も先進的なセキュリティ対策が施されていたとしても、ユーザーの作業用ノートPCに物理的にアクセスできれば完全な制御を入手できる」と述べている。
なお、この問題は「Spectre」や「Meltdown」とは無関係だ。
AMTに対するこの攻撃では、標的とするマシンに物理的にアクセスする必要があるものの、攻撃に要する時間が極めて短いため、ユーザーがノートPCの側を離れるだけで容易に実行できてしまう。
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BIOSにパスワードを設定しておけば一般的には、権限のないユーザーによる機器のブートや、低水準の変更を抑止できるものの、「Intel Management Engine BIOS extension(MEBx)」へのアクセスを防ぐことはできない。このため攻撃者は、AMTのデフォルトパスワードが変更されていない場合、AMTを再構成し、遠隔地から攻撃を仕掛けられるようになる。
また、デフォルトパスワードでの侵入を果たした攻撃者は、パスワードを変更し、遠隔地からのアクセスを許可し、AMTのユーザーオプトインを「none」に設定することで、ユーザーに一切悟られず、またユーザー入力を必要とせずに、該当機器にリモートアクセスできるようになる。攻撃は、標的となる機器と同一のネットワーク上で実行される必要があるものの、攻撃者がIntelの「Client Initiated Remote Access」(CIRA)サーバを構築している場合、ローカルネットワーク外から該当機器を監視することも理論的には可能だ。
この攻撃は標的とする機器に実際に近づく必要があるため、フィッシング電子メールのような遠隔地からの攻撃を実行に移すよりも難しいものとなっている。しかし、特定の標的を狙っている、高いスキルを持つ攻撃者であれば、その標的を短時間で攻撃するためのシナリオを作り上げることも不可能ではない。
F-Secureは、この種の攻撃を避けるうえで、システムのプロビジョニング作業において、強固なAMTパスワードの使用を必須要件にするとともに、パスワードが未知の値に設定されている場合、攻撃されている可能性を考慮するよう推奨している。またエンドユーザーには、ノートPCを安全ではない場所で監視のない状態にしておかないよう促している。F-Secureはこの問題について、メーカーらに伝えている。
Intelの担当者は米ZDNetに対し、「システムでIntel Management Engine BIOS Extension(MEBx)の保護を設定していないメーカーがあることについて、セキュリティ研究コミュニティーが注意を呼びかけてくれていることをありがたく思う」と述べた。
「当社は2015年に最適な設定についてガイダンスを発行し、2017年11月に更新している。そしてOEMがシステムに最大限のセキュリティを設定するよう強く促している。その最適な設定としては、最小限のアクセス権で実行すること、ファームウェアやセキュリティソフトウェア、OSを最新にしておくことなどがある」(Intel)
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。