海外コメンタリー

CIOの役割は今後10年でどう変わるのか--5人のITリーダーに聞く

Mark Samuels (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 編集部

2018-05-23 06:30

 ITのコンシューマライゼーションが最高情報責任者(CIO)の役割を縮小させると考えた者もいたが、現実には、あらゆる事業部門の継続的なデジタル化により、CIOは現代的なビジネスの中心で今もしっかりと存在感を放っているように思える。

 とはいえ、より多くの課題も先に待ち構えている。具体的には、最高マーケティング責任者(CMO)がテクノロジ支出に関して、以前より大きな責任を負うようになっており、基幹業務を担当する従業員はクラウドを使って、CIOにわざわざ相談することなくさまざまなサービスを購入できるようになった。それに加えて、最高データ責任者(CDO)や最高デジタル責任者(CDO)といった新しいCレベル幹部職も登場している。ITリーダーは複数の方向でさまざまな課題に直面している。

 それでは、これからの10年、ITリーダーの役割はどのように進化していくのだろうか。米ZDNetは、CIOの今後の役割を明確に示す5人のテクノロジ専門家に話を聞いた。

1. 新たな機会を利用する

 物流を専門に手がけるWincantonでCIOを務めるRichard Gifford氏によると、賢いITリーダーは現在、かつてないほど強い立場にあり、これからの10年、機会は増える一方だという。「CIOはこれまでもずっと特権的な立場にいた。われわれは組織全体を見渡せるからだ」(Gifford氏)

 「それは今後も変わらないだろう。そして、その広範な視野はこれからのデジタルジャーニーにおいて、われわれの強力な利点となる。CIOの今後の役割においては、データセンターを歩き回って既存テクノロジの最適化の改善を試みることよりも、デジタル機会と新しいビジネスモデルを利用することがはるかに大きな比重を占めるようになるだろう」(同氏)

 Gifford氏によると、最も優れたCIOはさまざまなシステムやサービスを利用して、持続するデジタル変革を作り出すという。「それは最も重要な役割の1つである。その本質は、事業とその業績をけん引するのにこれまでよりはるかに大きく貢献することだ」(同氏)

 「私のバックグラウンドはビジネスとマーケティングだ。私はずっとビジネスに関与し、テクノロジを通して業績をけん引する方法に関心を向けてきた。うわべだけのことや派手なことよりも、ビジネス的な価値にはるかに大きな関心がある。私よりもうまくテクノロジを管理できる人間は、ほかにいくらでもいる」とGifford氏は述べた。

2. 創造的なソリューションをまとめ上げる

 人材紹介会社AirswiftのCIOを務めるBrad Dowden氏によると、テクノロジのコモディティ化を受けて、エンタープライズテクノロジはもはや企業の秘技ではなくなっており、IT専門職の多くの分野が1つにまとまろうとしているという。テクノロジの枠組みが標準化されるにつれて、比較的困難な統合作業の多くがベンダーによって処理されるようになっている。

 「これからは、今よりもはるかに少人数のグループがITを運営するようになると思う。優秀なITプロフェッショナルは、仕事上の同僚と連携して、自らの組織内でテクノロジを可能な限り有効に利用する方法について慎重に考えるようになるだろう」(Dowden氏)

 GoogleやAmazon、Microsoftといった企業が優秀なコンピュータサイエンティストを雇用してツールを構築する一方で、それ以外の企業の大半は単純にそうした巨大企業のサービスの消費者になる。Dowden氏によると、同氏の企業では既にそうしたトレンドが現れており、ITチームは技術的な熟練よりもビジネス意識と分析により大きな関心を向けるようになっているという。

 「(そうしたITチームは)何行ものコードを書くことではなく、テクノロジを設定して、さまざまなビジネスプロセスに対処する方法を考えることに優れている。今後残るのは、創造的な役割だろう。実現可能なものをまとめ、さまざまな要素を組み合わせる方法を考え出すことで、CIOはITリーダーとして価値を付与することができる」とDowden氏は話す。

3. より高次のサービスを統合する

 Met Officeのチーフアーキテクトを務めるJames Tomkins氏は、デジタル変革を受け入れた組織で働く新種のITリーダーの1人だ。Tomkins氏によると、より多くの変化が今後起こり、これからの10年、CIOの役割に直接的な影響を及ぼすという。

 「数社の大手プロバイダーを中心とするコモディティ化への流れが続く一方で、特定のサービスがよりユーティリティに近くなる変化も起こる。そうしたサイクルは今後も続く。そうした新しくて、より高次のサービス群とそれらのサービスを応用してビジネス問題を解決する方法に注力する組織が、成功を収めるだろう」(Tomkins氏)

 同氏によると、Met Officeは既にITに対して、価値を重視するアプローチをとっているという。同組織のIT担当職員をコモディティ化されつつある活動から、より高次のサービス(例えば、サーバレスコンピューティングやIoT、音声インターフェース)を利用するタスクに振り向けることが狙いだ。将来、最も有能なCIOは高度なテクノロジを通して、組織の人々への価値の提供をサポートするようになる、とTomkins氏は話す。

 「企業は、そうした次の段階の、より高次なサービスに移行する準備をしなければならない。創造的破壊者は年がら年中、市場に参入しており、レガシープロセスの制約を受けずに機会を捉えることができる。先頭に立ちたい組織は、自分たちがこれらの高度なテクノロジを利用できることを示す必要がある」(同氏)

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