課題解決のためのUI/UX

「自動化」と「やっている感」--UI/UXで考えるシステムと人間の関わり方

綾塚祐二

2018-08-06 07:00

 機械、特にコンピュータで制御された機械は、人間の代わりにさまざまな作業を自動化してくれる。技術の発展により、自動運転車の実用化もかなり現実的になってきた。あるいは、コンピュータの画面上で行われる業務を自動化しようというRPA(Robotic Process Automation)も話題になっている。

 ほとんど定型的な作業から臨機応変に対応が求められる作業までレベルはさまざまであるが、そこには多くの場合、自動化システムとユーザー(人間)との関わりがあり、ユーザーエクスペリエンス(UX)を考える余地がある。今回は、自動化とUXについて考えたい。

自動運転車とUXデザイン

 安全性が十分に確保されれば、自動運転は楽だしありがたいと考える人は多いだろう。一方で、自動車の運転は「楽しみ」であり、自動運転なんて味気ないと思う人々もいるだろう。自分の身体を延長するように道具類を自在に使い「自分の能力」を拡張したかのごとく感じさせるのは、心地よいUXデザインのもたらす恩恵の一つであり、自動車の運転にももちろんそういう要素がある。いわゆる「走る喜び」である。

 では、どこまで自分で制御できればユーザーは満足できるのだろうか。

 ギア比を手動で変えるマニュアルトランスミッション(MT)の乗用車は、このところあまり見かけなくなってしまったが、オートマチックトランスミッション(AT)が出始めたころには、やはり「味気ない」などと言う人たちがいたと聞いた覚えがある。現在ほどはギアチェンジが滑らかではなく、そのタイミングも含めて運転中に違和感を覚えることも多かったと思われる。しかし、やがて技術の進歩とユーザー側の「慣れ」によってだんだん違和感が薄れていき、ほとんどの人が気にしないようになっていった。

 最近では、障害物などを検知したときのブレーキアシストや、走行速度・車間距離を維持するクルーズコントロールなどの機能が搭載された自動車も増えてきており、「自動化」の範囲は徐々に拡大している。AT車と同じように初めは多少の違和感を覚えたり、面白みがないと思われたりしても、多くのユーザーにとって労力が格段に減る(楽になる)のであれば、次第に受け入れられなじんでいくだろう。

カメラのオートフォーカス

 似たようなことは、カメラのオートフォーカス機能にも当てはまる。良い写真を撮ろうとすると、自由自在にピントを操ることが要求されるため、当初はオートフォーカスを否定するような声も聞かれた。しかし、手動でのピント合わせは初心者にとってハードルが高い作業だ。自動車と違って必要なときだけマニュアルに切り替えることもできるため、オートフォーカス機能は広く普及した。

 狙ったところにピントを合わせるのは、(並大抵のユーザーであれば)カメラに任せた方が正確で速い。しかし、「どこを狙うか」の判断をカメラが推測するのは簡単ではない。そこで、スマートフォンのカメラやコンパクトデジタルカメラなどであれば、画面上でピントを合わせたいところをタッチで指定できるようにしている。さらに、ユーザーの視線を検知して自動でピントを合わせてくれる機種もあった(あまり性能が出なかったのか、現時点では下火になっているようである。高性能化してまた搭載されるようになるかもしれない)。

 これをユーザー側の視点から考えると、狙いたいところをフォーカス調整で「間接的」に指定していたものが、より「直接的」に指定できるようになったと捉えられる。どちらの方がより細かく精度の高い操作ができるかという見方もあるが、操作が楽になり十分な性能であることに大きな異論はないだろう。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    マンガでわかる脆弱性“診断”と脆弱性“管理”の違い--セキュリティ体制の強化に脆弱性管理ツールの活用

  2. セキュリティ

    ChatGPTに関連する詐欺が大幅に増加、パロアルトの調査結果に見るマルウェアの現状

  3. セキュリティ

    情報セキュリティに対する懸念を解消、「ISMS認証」取得の検討から審査当日までのTo Doリスト

  4. セキュリティ

    従来型のセキュリティでは太刀打ちできない「生成AIによるサイバー攻撃」撃退法のススメ

  5. セキュリティ

    ISMSとPマークは何が違うのか--第三者認証取得を目指す企業が最初に理解すべきこと

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]