ZDNet Japan主催のプライベートカンファレンス「ZDNet Japan Summit 2018 攻めのIT経営を実現する4つのトレンド」が2018年12月4日、都内で開催された。企業がデジタルを活用して新たな価値とビジネスを創出していくために必要な「攻めのIT」のアプローチについて、戦略・開発・インフラストラクチャ・現場改革の4つの軸からっその方法論を提示した。
本記事では、ノキアソリューションズ&ネットワークス 営業本部長の村田茂男氏、ノキア ソフトウェア マーケット開発アジア太平洋・インド ディレクターのVincent Foo氏によるセッション「今こそ見直すべき、デジタル時代における顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)の重要性」の模様を紹介する。
デジタル化を成功させる5つのステップ
ノキアソリューションズ&ネットワークス 営業本部長の村田茂男氏
講演では、まず村田氏がノキアの取り組むデジタル変革について紹介した。ノキア ソフトウェアは、ネットワークの運用を支援するBSS(Business Support Systems)やOSS(Operation Support Systems)、クラウド、IoT、セキュリティなどのテレコムを中心とするソフトウェアを手掛け、世界のテレコムソフトウェア市場において2位のポジションにある。
冒頭で村田氏は、世界の企業におけるデジタル化の現状に触れ、マッキンゼー・アンド・カンパニーの2018年のデータから「高収益企業は大企業に限らずデジタル分野におけるイノベーションには積極的に取り組んでいる」というプラスの側面を示すと同時に、フォーブスの「70%のデジタル変革プロジェクトは失敗する」という無秩序なデジタル化に対する警告に触れた。
そこで村田氏は、デジタル化を成功させるための具体的な方法論として、次の5つのステップを提示している。
- デジタル化へのビジョン、戦略、新しいデジタル顧客を取り巻くビジネスケースを整理する
- エンドツーエンドの明確なデザインのポイントをつかむ
- スタディの成果を受けて、パイロットプロジェクトを立ち上げる
- 成功したプロジェクトから規模を拡大する
- 変革プログラム、リソース、技術戦略に適切に投資する
ノキアは、ユーザーのデジタル変革という課題に対し、「収益の最大化」と「運用の効率化」の2つの側面から支援している。デジタル収益の最大化へのアプローチでは、独自調査からデジタル分野で収益の高い企業が大胆なビジネスモデルを採用しており、デジタルの成熟度が高く、迅速なフォロワーであるという傾向が判明しており、同社は、BSS関連の製品群で新しいB2B、B2C、B2B2Xのビジネスモデルをサポートしている。具体的には5G時代における、「柔軟な課金モデルの作成」「迅速な新サービスの市場投入の支援」といったサービスを通じて、デジタルビジネスへの移行をサポートしているとのことだ。
ノキアが支援したこの領域における成功事例として、シンガポールの通信キャリア、M1のネットワークベースのセキュアな構築事例が挙げられた。
M1は、ネットワーク側でトラフィックをモニタリングするソフトウェアを導入。ユーザーの端末にセキュリティのアプリケーションを用意することなく、ネットワーク側でデバイスに感染したマルウェアによる異常なトラフィックを検出して対処することで、ユーザーを保護する。ユーザーに提供するそのセキュリティオプションが月額150円程度と安価だ。その結果、M1はネットワークの安全性というブランドイメージを確立するとともにマネタイゼーションも実現。ノキアのソフトウェアがM1と同社顧客に貢献したデジタル化の事例となっている。
もう1つの「運用効率の最大化」に向けたアプローチでは、5G時代に向けた通信領域における「ネットワークスライシング技術」が重要になるとしている。そこでノキアは、オーケストレーションによるネットワーク運用の自動化を推進、自動化に不可欠な機械学習、人工知能(AI)技術の活用も支援する。
ここでは、Telefonica UKの事例を紹介。ネットワークサービスを監視するという従来型のネットワークオペレーションセンター(NOC)から、これに加えてカスタマーエクスペリエンスの観点に基づき顧客満足度などを指標とする発展型のサービスオペレーションセンター(eSOC)への移行をノキアがサポートした。Telefonica UKのNOCからeSOCへの変革において、カスタマーケアの点でどう顧客に対応すれば満足度が高まるのかを把握するソリューションを提供し、予測・予防型のアプローチでサービス品質を向上させていく。
ノキアのソフトウェア製品群について村田氏は、「インテリジェンスを接続する」というコンセプトから、ビジネスアプリケーションと解析系のアプリケーションを組み合わせることで洞察を得ていける点に特徴があるとし、「そのフィードバックを交えてマネタイズのソリューションを組み合わせ、より早く適切なサービスを提供できるという形でソリューションを展開している」と述べた。
また、ソフトウェア基盤を共通化することではマイクロサービス化、ソフトウェアのモジュール化によって開発を進めている。ユーザーは1つの機能を追加する際、ソフトウェアのモジュールだけを提供すればいい。これにより、早いサイクルで新製品の導入、アップグレードが容易になり、共通基盤に実装することから運用の同一性も確保される。