ビジネスインテリジェンス(BI)やデータ可視化ツールとして知られるDomoだが、目指すのはビジネス基盤だ。同社が3月22日まで、本拠地の米国ユタ州ソルトレークシティで開催した年次イベント「Domopalooza 2019」では、新規株式公開(IPO)を果たした同社が次のステップに向けて戦略を進めていることが感じられた。
「自社のビジネスについての情報がない」からスタートした
Domopaloozaは同社が毎年3月に開催する顧客とパートナー向けの年次イベントで、2019年は世界27カ国から3000人が登録した。創業者で最高経営責任者(CEO)のJosh James氏は、まず2018年6月に行ったIPOから話した。
Josh James氏。Omnitureに次ぐ2回目のIPOについて「密かに誇りに思っている」とも。日本語も達者で、企業名の「DOMO」は“どうもありがとう”と言われる企業になりたいという思いから
「Domoを使うことでビジネスの方法が変わったという顧客の声をもらっている。だが、われわれは次のステップに進む必要があった」とJames氏は振り返る。しかし、IPOの後に株価はなかなか上がらず、成功とは言えない状態が続いている。「痛みを伴う」と認めながらも、「われわれは4億ドルを研究開発に費やしている。この規模の投資をしているのは、今以上に大きな規模になるつもりだから。そのための資金が必要だ」と株式公開の必要性を語った。そして、「Domoはビジネスを動かすプラットフォームだと確信している」と続けた。
業績そのものは好調だ。Domopaloozaの直前に発表した2019会計年度第4四半期(2018年11月~2019年1月期)の決算によると、売上高は前年同期比31%増の3940万ドル、このうち81%がサブスクリプションによる売り上げとなっている。一方で、損失は続いており、2500万ドルの純損失を計上している。これは前年同期比の3900万ドルからの縮小となる。
Domoが目指すものについても説明した。James氏は1996年にマーケティング/ウェブ分析のOmnitureを共同創業し、2009年に同社をAdobe Systemsに売却。その後、Domoをスタートさせた。「Domoは私が抱えていた問題を解決するためにスタートした」(James氏)
その“問題”とは、Omniture時代に自分のビジネスについての情報がないことにフラストレーションを感じていたことだ。「リソースが豊富にある大企業も同じだ。ビジネスがどうなっているのか、リアルタイムの情報を得られない。情報はたくさんあるのに、必要なものがない」(James氏)という状態だった。そこで、全ての情報を結びつけてリアルタイムで見る仕組みとしてDomoを構築した。
現在、Domoプラットフォームは“7 Samurais(7人の侍)”として、(1)データソースと接続する「Connect」、(2)データを保存する「Store(VaultとAdrenaline)」、(3)ETLツールの「Prepare(Fusion)」、(4)視覚化「Visualize(Explorer)」、(5)データ洞察の共有「Collaborate(Buzz)」、(6)予測「Predict(Mr. Roboto)」、(7)プラットフォーム上にカスタムアプリを構築する「Extend(Appstore)」で構成される。
Domoのアーキテクチャ
「重要なのは、ベンダーロックインはないということ。既に投資済みのさまざまなベンダーの技術と統合できる」とJames氏は強調した。Domoはこのプラットフォームを土台にと異常検出やワークフロー管理などの機能も追加しており、ビジネスで簡単に利用できるとする。
データが増えれば増えるほど、洞察の幅が広がる。James氏によると、Domoでデータレイクを構築する中堅企業はもちろん、専用のデータレイクはあるが結局はDomoに一番多くデータが入っていたという大企業もあるという。