ティントリが再始動--“Generic Object Model”へのロードマップを提示

渡邉利和 2019年05月24日 13時38分

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 データダイレクト・ネットワークス・ジャパンは5月23日、2018年9月に買収したストレージベンダーTintriの事業に関する説明会を開催した。同事業は「Tintri by DDN」のブランドで再開されており、今後はデータベース統合機能を開発、年内に正式リリースする予定だと発表した。

 Tintriは、「仮想マシンを理解する(VM-aware)ストレージ」として注目を集め、日本市場でも好評を得ていたが、株式公開から約1年後の2018年7月に資金ショートを起こして破産申請したことで大きなニュースとなった。特にサポートが重要なエンタープライズユーザー向けのストレージ製品ということで、ユーザーはもちろん、販売やシステム構築を手がけたパートナー各社にも大きなインパクトがあったようだ。その後、2018年9月に米DataDirect Networks(DDN)が6000万ドルでTintriを買収した。

DataDirect Networks グローバルセールス、マーケティング、フィールドサービス担当シニアバイスプレジデント データダイレクト・ネットワークス・ジャパン ゼネラルマネージャーのRobert Triendl氏
DataDirect Networks グローバルセールス、マーケティング、フィールドサービス担当シニアバイスプレジデント データダイレクト・ネットワークス・ジャパン ゼネラルマネージャーのRobert Triendl氏

 DDNジャパンのゼネラルマネージャーで米国本社のグローバルセールス、マーケティング、フィールドサービス担当シニアバイスプレジデントを務めるRobert Triendl氏は、日本でのDDN製品の利用が2005年に始まっており、筑波大学や東京工業大学のスーパーコンピュータ「TSUBAME2」、宇宙航空研究開発機構(JAXA)や日本原子力研究開発機構(JAEA)といった学術研究機関などのハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)ユーザーを中心に支持を拡大しつつあることを紹介した

国内でのDDN製品の導入事例(出典:Tintri by DDN)
国内でのDDN製品の導入事例(出典:Tintri by DDN)

 近年は買収・合併による事業領域の拡大にも積極的に取り組んでいるとし、Tintriの買収もエンタープライズ市場や、今後拡大が想定されるさまざまなデータ活用における高度なストレージ需要に対応する手段となると位置付けた。なお、組織面で「Tintri by DDN」は、米国では法人として存続し独立した事業部門となっているが、日本ではDDNジャパン内のTintri事業部門となり、かつて存在した「ティントリジャパン」のような日本法人にはなっていない。

 続いて登壇した米Tintri by DDN ワールドワイド セールス&マーケティング シニアバイスプレジデントのPhillip Trickovic氏が、Tintriの現状について紹介した。同氏は5年前にTintriに入社したといい、まさに急成長から破綻、再建といった一連のプロセスを経験したという。

Tintri by DDN ワールドワイド セールス&マーケティング シニアバイスプレジデントのPhillip Trickovic氏
Tintri by DDN ワールドワイド セールス&マーケティング シニアバイスプレジデントのPhillip Trickovic氏

 まず、DDNとTintriの組み合わせが「HPC」と「仮想化」という、いわば両極に位置する企業の組み合わせであり、良い組み合わせであったと位置付けた。同時に、Tintriに欠けていた要素がDDNによって補完されたとした。「DDNには財務面でも技術開発の面でもしっかりとした統制があった。一方Tintriには技術や製品、顧客はあったが、適切な経営のリーダシップはなかった」と同氏は明かした。その具体例として同氏は、創立から破産までの7年間に、四半期決算で一度も黒字がなかったとも明かしている。

 破産理由の一つにTrickovic氏が挙げたのは、「人を増やしすぎた」こと。事務管理などのための人員増がコスト負担となったとしている。この反省を踏まえて同社では、顧客サポートのためのエンジニアをまず確保し、続いて製品開発を担うエンジニアの再雇用を進める一方、その他の業務に関してはDDN側に任せる形で人員増を抑制しているという。財務規律が確立されたことで同社は、買収直後から2四半期連続で黒字を計上し、2018年第4四半期は対前年比で300%成長となったという。また、破産から買収に至る過程でTrickovic氏は、「既存の主要顧客のうちの40~50%を失う」と想定して事業計画を立案したが、「これは完全に間違った予測だった。実際には離脱した顧客はおらず、逆にソリューションの導入を継続してくれた」という。

 最後に、米Tintri by DDN プロダクトマネージメント シニアダイレクターのTomer Hagay氏が今後の製品機能の拡張について説明した。Tintriのストレージは仮想マシン(VM)を理解し、VM単位で運用管理ができる点を大きな特徴としていたが、2019年内に予定する機能拡張では、同様の認識をデータベース(DB)にも広げ、「DB-aware」とすることを明かした。

Tintri by DDN プロダクトマネージメント シニアダイレクターのTomer Hagay
Tintri by DDN プロダクトマネージメント シニアダイレクターのTomer Hagay

 具体的なイメージとしては、あるVM上でDBサーバーが稼働し、そこで複数のDBがホストされていた場合、それぞれのDB単位で運用管理やQoS設定が可能になるというものだ。DBサーバーのライセンスは通常インスタンス単位となるため、負荷の面で問題がない範囲でできる限り多数のDBをDBサーバー上に集約する方がコスト面では有利になるわけだが、従来の「VM-aware」のレベルの運用管理ではこれらのDBの単位で個別にQoSを管理するようなことはできなかった。それが、今回発表された機能によって実現されることになる。

 ちなみに、現在の同社のプロダクトポートフォリオは、基本的に買収前と同様のラインナップを維持しており、今後も製品ラインナップを維持したまま機能拡張を継続していく計画だという。買収完了後の2018年12月には統合管理ツールの「Tintri Global Center 4.0」がリリースされ、「Storage vMotion Offload」機能などを新規に提供した。

 さらに、年内にリリース予定の「Tintri OS 5.0」で、今回発表のDB-aware機能が実装される予定だ。Hagay氏によると、DB-aware機能は買収前から開発が進められていたが、単にDBに対応した機能を新たに追加するという形ではなく、既存のVM-aware機能を実現していた「VM Object Model」を根本から作り直し、「Generic Object Model」に基づいて再構築したという。つまり、今後どのようなオブジェクトであってもTintri側が理解できるような共通基盤を構築した形だ。開発に時間を要したが、これが完成したことで今後は必要に応じてさまざまなオブジェクトに迅速に対応していくことが可能になるという。DB-aware機能は、まずMicrosoft SQL Serverに対応し、今後Oracle DatabaseやMongo DBなどにも対応していく計画だ。さらには、DB以外のオブジェクトとしてコンテナー環境に対応していく計画もあるという。

DB-aware機能の概要とロードマップ(出典:Tintri by DDN)
DB-aware機能の概要とロードマップ(出典:Tintri by DDN)

 なお、日本側のスタッフに聞いたところ、具体的な数字は非公開だが、日本でも米国と同様の成長軌道に乗っているという。買収後に新体制が確立されるまでに空白期間が約2カ月生じたそうだが、その間は国内のパートナー各社がユーザーサポートを継続してくれたそうだ。再建後はサポート体制の再確立を最優先でし、既存ユーザーに対するサポートを継続したことで、国内事業へのダメージは最小限に抑えられたという。

 破綻からの買収ということでイメージ悪化などの悪影響が全くなかったわけではないものの、Tintriの技術/製品を高く評価して導入を決定した大規模ユーザーはそのまま同社製品の運用を継続しており、さらに追加導入も順次行っているとのこと。これまでの経緯から、ともすれば「ボロボロになって消えていった」かのようなイメージを受けてしまいかねないが、実際には同社の技術や製品を高く評価していたユーザー企業が同社の支えになっていたようだ。製品アーキテクチャーの根本的なアップデートも果たした結果、今後は仮想化環境のみならず、DBやコンテナーなどのさまざまなワークロードを効率的に支えるユニークなストレージとして再び輝くことが期待される。

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