「できない理由探し」はもうできない--「AWS Amplify」によるアプリ基盤の開発事例

大場みのり (編集部)

2019-07-25 15:32

 アマゾン ウェブ サービス(AWS)ジャパンは7月23日、ウェブ/モバイルアプリ開発に関する説明会を開催。その中で、学習塾などを運営するtyotto、料理動画を配信するCookpadTVの開発事例が紹介された。

 AWSジャパン スタートアップソリューションアーキテクトの塚田朗弘氏は「本来アプリ開発者がやりたいことは、サーバーの構築などではなくユーザー行動の分析やウェブコンテンツの配信など、サービスの価値向上に直結すること。そのためAWSは、開発者に向けて『AWS Amplify』を提供している」と述べた。

AWSの塚田氏
AWSの塚田氏

 AWS Amplifyは、「Amplify CLI(Command Line Interface)」「Amplify Framework」「Amplify Console」という3つのコンポーネントで成り立っている。同サービスは、開発者の用途に応じたバックエンド機能をサーバーレスアーキテクチャーで構築。インフラストラクチャーのプロビジョニングや管理が不要となり、開発者は本来の開発業務に集中することが可能になる。

 AWS Amplifyは、GraphQLのマネージドサービス「AWS AppSync」と組み合わせることも可能だ。AWS AppSyncは、GraphQLを用いて複数のデータソース間のやりとりをシンプルにするほか、クライアントに対してリアルタイムなデータの処理も可能という。

 AWS Amplifyの利用には、公式サイトのチュートリアルを用いる。また、2018年にオープンしたスタートアップ企業や開発者向けのコワーキングイベントスペース「AWS Loft Tokyo」の活用が推奨されている。同スペースには、1~2人のソリューションアーキテクトやサポートエンジニアが「エキスパート」としてカウンターで待機し、来訪者の技術的な質問に予約不要で対応するサービス「Ask An Expert」がある。

Ask An Expertのイメージ
Ask An Expertのイメージ

エキスパートに40回以上質問

 2016年に立ち上げたスタートアップ企業のtyottoは現在、学習塾の運営から得られたノウハウをもとに学習支援アプリの開発に取り組んでおり、その中でAWS Amplifyを利用している。

  AWS Amplifyの導入前は、サーバーを保守・監視する必要性やステージング環境を常時稼働するコスト、拡張できないシステム構成といった課題があったと、CTO(最高技術責任者)の伊藤哲志氏は説明した。これらの課題は技術面ではやりがいがあるものの、スタートアップ企業が注力すべきことではないと同氏は感じていたという。

tyottoの伊藤氏
tyottoの伊藤氏

 そんな中、AWS Loft Tokyoで開催されたイベントを通して伊藤氏は、AWS Amplifyを知る。このサービスであれば、AWSのノウハウに沿ってバックエンドを構築できると考え、活用に至ったとしている。

 学習支援アプリでは現在、Amplify FrameworkとAmplify Consoleを使用している。伊藤氏によると、Amplify Framework は、ユーザー認証に関する機能一式が提供され、AWSサービスにアクセスするための認証情報の管理を全て行ってくれる。これにより、高速かつ安全な開発を可能にするという。Amplify Consoleに関しては、ウェブアプリ配信基盤の構築やデプロイを簡単に行ったり、開発中のアクセス制限や複数環境の同時配信を可能にしたりすることで、構築の工数がほぼゼロになるとしている。

新システムのアーキテクチャー(出典:AWSジャパン)
新システムのアーキテクチャー(出典:AWSジャパン)

 AWS Loft Tokyoの活用状況に関して、伊藤氏は「コワーキングスペースの利用に加え、Ask An Expertも積極的に利用している。これまでの質問回数は40回以上になる。AWS主催のセミナーにも隔週ペースで参加している」とコメント。さらに関連イベントにも登壇することで、資料を見た人をエンジニアとして採用したり、社外のエンジニアと交流を持ったりすることが可能になったという。

 「新規アプリを高速開発するならAWS Amplifyを使わない手はない。場所やサービス、ノウハウなどあらゆることを支援してくれるおかげで、開発者は本来やるべきことに集中できる。これだけ用意してもらったら、技術がない、お金がない、人がいないといった『できない理由探し』はもうできないと感じながら業務に打ち込んでいる」と伊藤氏は語った。

バッファリングでコメント数の増加に対応

 CookpadTVは、2018年の設立当初は他社サービスを使っていたが、親会社のクックパッドがAWSのサービスを利用していたことや、既存環境でしばしば障害が発生していたことから、AWS AppSyncに移行したと取締役CTOを務める渡辺慎也氏は説明する。

CookpadTVの渡辺氏
CookpadTVの渡辺氏

 その結果、移行前に抱えていたデータの一元管理やサービスの信頼性といった課題の解決を解決した。また、料理研究家やタレントが料理をする様子を配信するアプリ「cookpadlive」では、ユーザーのコメントをサーバー経由でAWS AppSyncに送ることで、誹謗中傷などのNGワードを含んだコメントをフィルタリングしたり、不正行為をするアカウントを停止したりしている。

 有名な配信者だと認識できないほど多くのコメントが届くため、コメントのバッファリングも実施している。1秒以内に送信されたコメントをバッファリングして10コメントずつ流すことで、コメントが読めるようになるほか、ファンアウト数が減り、送信処理の効率化やコスト削減につながるという。

 渡辺氏は「(AWS AppSyncへの)移行後は、想定通りのメリットを享受できている。バッファリングにより、会社の成長に伴うコメント数の増加にも対応している」と述べた。

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