社会課題に挑む開発コンぺ「Call for Code」--日本IBMが開発者支援の取り組み

藤本和彦 (編集部)

2019-11-15 07:00

 日本IBMは11月14日、コードの力で未来を変えることを目的とした「Call for Code」の取り組みについて記者説明会を開催した。同日には、自然災害による被害を防ぐアプリの開発コンペ「Call for Codeチャレンジ 2019」の日本最優秀ソリューションを開発したチームが発表された。

 IBMでは、デベロッパー(開発者)を「コードの力で未来を変える人々」と定義し、企業におけるIT投資の意思決定に強い影響力を持ち、ビジネス課題や社会課題の解決に貢献する重要な立ち位置を担っていると説明する。

 日本における開発者の活動を支援するチームが“デベロッパー・アドボカシー”になる。デベロッパー・アドボカシー事業部長の大西彰氏によると、ダイバーシティー(多様性)やインクルージョン(包括性)を大切した組織であり、日本の開発者が社会の問題や課題を解決できるよう、さまざまな活動を行っているという。

 会見では、その活動の一部として、技術情報を集約したウェブサイト「IBM Developer Japan」や定期開催しているハンズオンセミナー「IBM Developer Dojo」などが紹介された。また、IBMは20年以上にわたりオープンソースコミュニティーに寄与しており、最近ではクラウドネイティブに向けた取り組みに注力している点にも触れた。

 IBMの社会貢献に対する取り組みの一つが「Call for Code」になる。これは、世界中のエンジニアやビジネスパーソンが参加する自然災害アプリの開発コンペティションであり、災害対策や災害復興のためのソリューションを開発し、世界の人々や地域に配備することを目的としている。アプリ開発者やITエンジニアなど誰でも参加可能で、人工知能(AI)やブロックチェーンをはじめとする「IBM Cloud」のサービスが無料で提供される。

自然災害は世界最大の課題の一つとなっている
自然災害は世界最大の課題の一つとなっている

 Call for Codeチャレンジ 2019には、世界165カ国から18万人以上が参加し、応募作品数は5000件を超えた。グローバルでの最優秀賞は、煙と有害物質から消防士の健康を守るためのIoTソリューションを開発した欧州の「Prometeo」が受賞した。「Node-RED」「Watson Machine Learning」「Kubernetes Cluster」といった技術が活用されたという。

 日本の応募作品からは、「Call for Code 2019 Japan Top Solution」として3チームが選出された。その中でも最優秀チームに選ばれたのが、慶應義塾大学 リーディングプログラムの開発した「KOUDOU Flow」になる。

 これは、災害時の行動フローの作成とそれに基づく行動支援システムであり、ユーザーは災害時の行動フローを事前に計画しておき、災害が発生した際にはアプリに表示されるフローに従って適切に避難行動を取れるようになる。

 多くの人が災害対策の必要性を理解していながらも、実際には避難場所を正確に把握しておらず、災害時の安否確認なども十分に話し合われていない状況にあるという。企業においても、事業継続計画(BCP)を用意しているものの、その維持・運用には多大なコストとワークロードがかかっている。そうした災害対策に関する課題に着目して、KOUDOU Flowは開発された。

KOUDOU Flowのシステム構成イメージ
KOUDOU Flowのシステム構成イメージ

 アクションフローの進行状況を可視化することで、ユーザーが現在の状況と次に何をすべきかを容易に把握できるようになるほか、緊急地震速報のような公的な情報をトリガーとすることで、スムーズな行動マニュアルの実践に移ることが可能になるとしている。

 日本最優秀チームに選ばれたKOUDOU Flowには、賞金5000ドルが授与され、IBMによる継続的な技術支援が提供される。また、副賞としてThink Lab TokyoツアーとIBM研究員とのラウンドテーブルにも招待される予定となっている。

 Japan Top Solutionに選出された他の2チームは「Prevent the Outbreak of Infection」と「Blooming - Everybody Smiles More」になる。

 Prevent the Outbreak of Infectionは、自然災害発生後の避難所での感染症拡大を未然に防ぐためのソリューション。現場で医療関係者が不足している状況下において、Watson Visual Recognitionを使って避難所での感染症原因菌の特定を支援する。専門医や避難所関係者と情報共有することで、適切な薬剤を迅速に現場へ輸送することが可能になるという。

 Blooming - Everybody Smiles Moreは、ボランティアの力を最大化し、災害復興を最速化するためのソリューション。昨今、ボランティアに参加する側と受け入れる側でのミスマッチが深刻化しており、ボランティア参加者の能力が十分に生かされていないなども問題も顕在化しているという。そうした課題を解決するため、教育や高齢福祉、ジェンダー、防災減災の課題に取り組む団体であるCode for AICHIでは、自然言語処理や音声認識デジタルアシスタントなどを使って、ボランティアのスキルや現場担当者の要求するスキルをカテゴライズしたり、ボランティアのリクエストや回答を取得する仕組みを構築した。


会見に登壇したCall for Codeチャレンジ 2019チームと
デジタル・セールス事業 チーフ・デジタル・オフィサーで執行役員の尾股宏氏(上段右はじ)
デベロッパー・アドボカシー事業部長 大西彰氏(左はじ)
デベロッパー・アドボカシー事業部 Developer Advocateの戸倉彩氏(下段右はじ)

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