パナソニックは11月25日、ディープラーニングの応用による顔認証技術のAPI(アプリケーションプログラミングインターフェース)を提供開始した。同サービスは、同社の企業向けIoTサービス「µSockets(ミューソケッツ)」内のマイクロサービスとして展開される。
今回のAPIはクラウドで提供され、顧客企業はスマートフォン向けアプリやウェブサイト、入退管理システムなどに顔認証機能を簡単に組み込むことができる。複数拠点での利用も容易だ。
パナソニックの顔認証技術は、複数のディープラーニングを組み合わせて顔全体と顔詳細を把握する特徴量生成手法と、顔画像の撮影環境に応じて誤りを抑制する類似度計算手法を組み合わせたアルゴリズムとなっている。これにより、従来認証が困難であった斜めの顔、照明の明暗が強い環境、顔の一部が隠れている状態でも可能となるという。
セキュリティ面では、µSocketsの基盤となる「Azure Virtual Network(Azure VNET)」のプライベートネットワーク環境によって外部と分離され、ファイアウォールでAPIに接続する通信プロトコルを制限する。また、データのセキュリティもパナソニックのプログラムでしか取り扱えない顔特徴量データのみを保有するため安全な形態だという。
パナソニック コネクティッドソリューションズ社 副社長 兼 イノベーションセンター 所長の江坂忠晴氏は「われわれは認証精度などの技術力に加え、家電で培ったUI(ユーザーインタフェース)・UX(ユーザーエクスペリエンス)のデザイン力や、国内シェア1位の監視カメラや決済端末で培ったセキュリティ技術をトータルで提供することができる」と述べた。
パナソニックの江坂氏
月額利用料(税別)は、「登録人数料金」に「認証回数料金」を足した課金体系となり、登録人数料金は1人当たり5円、認証回数料金は1回当たり1円。トライアルプログラムも設け、申し込み後の翌月度末まで無料で利用できる。最大登録人数が100人、最大認証回数は1000回となっている。
説明会では、顔認証APIのデモンストレーションも実施した。同社が予想する導入先の1つに物流業界があり、配送員が出退勤する際の本人確認というシチュエーションで行った。
配送員役は、パナソニックの従業員。マスクを付けた配送員の鼻が出ているのは、故意ではないという。
マスクで顔の一部が隠れていてもすぐに認証できた。
この説明会には、マッチングアプリ「タップル誕生」を運営する企業マッチングエージェント 代表取締役社長の合田武広氏も登壇した。マッチングエージェントは顔認証APIを導入し、2019年冬にユーザーの本人確認機能を同アプリに搭載する予定だ。
マッチングエージェントの合田氏
パナソニックの顔認証APIを選んだ理由として合田氏は、認証精度の高さ、ディープラーニングを応用していること、空港やアミューズメントパークなどへの導入実績を挙げた。
これまでタップル誕生では、身分証明書の提示による年齢確認は行っていたものの、なりすましや、同一人物による複数アカウントの作成が課題となっていた。ユーザーからの通報の約10%がなりすましによるものだという。
これを受けてマッチングエージェントは、年齢確認だけでなくパナソニックの顔認証技術を活用して本人確認をすることに至ったとしている。ユーザーにスマートフォンのカメラによる自撮り写真を求め、年齢確認の際に送信された身分証明書の画像と照合することで本人確認を行う仕組みとする。
合田氏は「『マッチングサービスを選ぶ際に重視することは何か』という質問に対して、安全性と答えた回答者は全体の約3分の1と最も多かった。安全性を高めることにより、マッチングアプリが社会のインフラのようなものになる世界を実現していきたい」と語った。