短期集中連載「NRF 2020レポート」
- 第1回:Walmartだけではない、変貌するグローバルリテーラーのデジタル変革による狙いとは
- 第2回:デジタル変革を進める中で直面する3つの壁
- 第3回:デジタル変革を通して未来の姿を描くということ--国内リテーラーへの示唆(本稿)
第1回、第2回では、グローバルリテーラーのデジタル変革について、事例を交えて紹介してきた。リテーラー(小売・流通企業)によって取り組み内容はさまざまだが、いずれもテクノロジーの力を活用して積極的に変化しようとしていることが感じられたのではないだろうか。
他方で、日本国内のリテーラーに目を向けてみると、どのような状況だろうか。数年前より、新しいテクノロジーを導入する店舗は増えてきたが、真新しい顧客体験を提供することだけが目的となっているケースや単発的な取り組みで終わっているケースが多いように感じる。“デジタル”という言葉が先行し、その先にある姿を描くところまでたどり着くことなく、目先の施策の実施で終わってしまうのではないかと懸念される。
われわれも企業からデジタル変革の相談を受けることが多い。そこで聞かれるのは、「何から手をつければ良いか分からない」「投資効果を算出できない(経営層を説得するに足る根拠が提示できない)」「PoC(Proof of Concept:概念実証)から先に進まない」といった内容がほとんどである。
このような状況から脱するため、国内のリテーラーには、「守り・攻め」への施策に取り組む前に、デジタル戦略(デジタル変革による3年後の全体像や「守り・攻め」のロードマップ)を改めて描くことが求められている。また、既に戦略を策定しているリテーラーは、「攻め」の施策だけではなく、その前提となる「守り」の施策が含まれているかを確認し、抜けているのであれば、すぐにでも「守り」の施策を検討する必要がある。
デジタル変革の先にある未来を描くことは簡単なことではない。いったい何から手をつけるとよいのだろうか。
未来の姿を考える際、まずは“自社およびリテール業界ならではの強みは何か”という点を改めて整理することが重要だ。国内の隅々まで整えられた流通網や物流のノウハウ、また顧客の声を重視し吸い上げる社内の仕組みなどは、日本国内のリテーラーならではの強みだ。加えてリテーラーは、共通して消費者との接点が一番多く、購買履歴以外にニーズや行動などのデータを集めることができるという優位性も持っている。
こうした特徴をデジタルの力によって、どう活用していくべきかを掘り下げて検討することで、より具体的に未来の姿を描くヒントになるだろう。