人工知能(AI)や機械学習、データ分析など、企業のデジタル変革(DX)を支援するための技術や製品が大きく注目されている。そうしたツールが本来の能力を発揮するには、大量のデータが必要になるが、多くの企業でその準備が整っていない。総務省の調査でも、データの収集・管理にかかるコストの増大が課題や障壁として顕在化しており、分析ツールのためのデータ準備ができていない状態だという。
Denodo Technologiesで営業本部長を務める中山尚美氏
データ仮想化製品を展開するDenodo Technologiesで営業本部長を務める中山尚美氏は、企業が抱えるデータ管理の課題について次のように語る。「より迅速・正確なビジネスの意思決定が必要とされる一方で、エンタープライズレベルのガバナンスやセキュリティが必要とされ、ITコストの削減も求められる」
中山氏は、企業はそれぞれの課題に対して個別のソリューションで対応しているが、根本的な解決には至っていないといい、「統合的に解決できるソリューションが必要」と指摘する。
データを集約・管理する既存のソリューションでは、データウェアハウス(DWH)やデータレイクがある。通常、ETL(抽出、変換・加工、ロード)と呼ばれる処理で、複数のデータソースからデータをコピーし、必要な変換・加工をして、統合システムの中にデータを保管する。
Denodoで展開するデータ仮想化は、ETLやDWH、データレイクなどと全く異なる手法を採用するデータ統合技術になる。データを物理的に動かして新たな場所に統合するのではなく、データをそれぞれのデータソースに置いたまま統合された形でリアルタイムに提供することができる。
データ仮想化レイヤーでは、データがどのようなフォーマットでどこに保存されているかなどのデータアクセスに関する複雑な要素を抽象化する。データのレプリケーションを一切行わないことが特徴。データ仮想化レイヤーにはデータを保存せず、必要なデータソースを参照するためのメタデータを持っている。また、データ仮想化レイヤーでアクセス制御を行うことができる。さまざまなデータソースにAPI経由でデータ仮想化レイヤーから一元的に連携することも可能になる。
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こうした特徴によって、コピーデータ用のストレージコストを抑え、データソースからデータをコピーするためのツール類を減らし、システム構築や維持メンテにかかるコスト、IT部門からデータをユーザーに提供するまでの時間を削減できる。コピーデータの削減、トランザクション管理、セキュリティ管理の強化にも役立てられる。
Forrester Researchの調査によると、2016年度のデータ仮想化市場はライセンスおよびサービスを含み37億ドル、年平均成長率は13%で推移しているという。2021年には約67億ドル規模に成長する見込みだ。ガートナーのハイプサイクルでは、2018年7月段階で安定期に位置付けられているという。
Denodoは、1999年にスペインで創業したITベンダー。データ仮想化製品に特化し、グローバルで800社超の顧客企業を抱える。2019年から日本での展開を本格化させており、三井住友信託、大日本印刷、KDDIなどが国内ユーザーの事例になっている。中山氏によると、国内ユーザーは10社強という。