富士通は、海上交通管制業務を行う東京湾海上交通センターにおいて、人工知能(AI)を活用して船舶同士のニアミス(異常接近)を予測する、船舶の衝突リスク予測技術の実証実験を行った。この実証は、2019年12月6日~2020年3月23日まで実施された。
東京湾海上交通センター運用管制官による評価の様子(出典:富士通)
船舶の衝突リスク予測技術は、富士通研究所が開発したAI「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」を利用している。この技術を海上交通管制業務で使用し、レーダーや船舶自動識別装置(AIS)などから取得されるさまざまな船舶情報を集約。船舶に対し必要な情報を提供するために用いられるVTS(Vessel Traffic Services)システムへ適用し、東京湾において船舶衝突リスクの検知と衝突リスクが集中するエリアを予測することが可能かどうかを検証した。
船舶の衝突リスク予測技術のイメージ(出典:富士通)
運用管制官の業務における実用性評価(出典:富士通)
統計分析の結果、衝突リスク予測技術を利用しているケースと、していないケースでの比較で、予測技術を利用している方が運用管制官の船舶に対する注意喚起の警告のタイミングが平均して2分程度早まり、衝突リスクのある船舶の早期発見に効果があることを確認した。また、最終的に衝突リスクがさらに高まった船舶に対して行う危険回避の勧告の回数が従来に比べ2倍近くまで増加し、より積極的かつ予防的に管制を行い、安全性強化につながる可能性があるという。
さらに衝突リスク予測技術は、衝突リスクという定性的な状態を定量化して運用管制官に認識させることにより、運用管制官の経験や技量に依存することなく、一定のレベルで業務の遂行が可能となることを確認した。特に経験年数が浅い新人の運用管制官でも経験豊富なベテラン運用管制官と同等の管制アクションが可能となる場合もあったという。