日立製作所は、企業や組織の理念やビジョン、施策に対する従業員の共感度合いを分析する「共感モニタリングサービス」の提供を開始した。利用価格は個別見積もり。
新サービスは、「グラウンデッド・セオリー・アプローチ」と呼ばれる調査手法を応用した、一橋大学大学院阿久津研究室と共同開発のサーベイ・分析手法をもとに、日立でそれらのノウハウをシステム化ものになる。
サービス概要(出典:日立製作所)
グラウンデッド・セオリー・アプローチとは質的な社会調査手法の一つで、得られたデータを文章化し、特徴的な単語をコード化して分析する手法のこと。定性調査の多くは、データを集めた後は各自で考え、分析・評価するのに対し、この手法では、分析者の印象や直感ではなく、データに基づいて仮説や理論を構築することを重視している。
同サービスは、メッセージの「どの部分」が「どのように」受け止められているかや、従業員にどう感じてほしいかの期待値と実際の受け止められ方とのギャップなどを把握できるサーベイ環境を提供する「共感度合い可視化サービス」と、サーベイ結果から浸透を阻害する原因をコンサルタントが構造分析し、改善のための施策立案を支援する「改善施策コンサルティングサービス」から構成されている。
「共感度合い可視化サービス」では、個別のサーベイ設計をすることなく、企業理念に関するブランドブックやトップメッセージなどテキスト資料のほか、動画コンテンツやオンラインでのセミナーそのものをサーベイシートとし、すぐに調査を開始して素早く結果を得ることができる。また、テレワーク環境下での発信においてもリアルタイムに聴講者の反応を把握できるため、オンラインでの双方向のコミュニケーションを実現するツールの一つとしても役立つ。
「改善施策コンサルティングサービス」では、グラウンデッド・セオリー・アプローチの質的調査手法を応用した、独自の手法と専用の分析ツールを用いる。従業員の受け止め方の背景にある原因(周辺環境、価値観、行動様式など)をデータに基づいて仮説化し、構造的に可視化することが可能で、課題に合わせて従業員の行動・実践につなげていくための、より本質的な組織変革の施策検討に生かすことができる。
このサービスを導入することで、煩雑な集計作業の負荷を軽減するほか、サーベイで集まったデータを分析し、現れた現象がどのような原因や背景によって生じているかを構造的に理解できる。一般的な選択式アンケートなどによる定量評価と比べ、共感や浸透を阻害している具体的な原因を特定できるため、メッセージ内容の改善など、具体的なアクション検討につなげることが可能という。
提供に先立ち、赤ちゃん本舗と日経BPコンサルティングのインターナルブランディング強化に向けた従業員向けサーベイにおいて、サービスの先行検証を実施した。両社ともに、会社や組織の掲げるビジョンや目指す姿に対する従業員の共感度を精緻に確認できた。さらに想定していなかった回答傾向が見られるなど、現状の実態把握や課題抽出に寄与することを確認した。