「Windows」「Linux」で基幹システムを構築してオンプレミスからクラウドへの業務システム機能の移行を進めているユーザー、またはそれらを推進するベンダーからすると、オフコンと呼ばれる「IBM i(AS/400)」は、「まだ、使っているの?」「デジタルトランスフォーメーション(DX)対応は大丈夫?」「早くレガシーはオープン化しないと」という認識が多い。
こういった声はオフコンユーザー企業の経営者の耳にも入り、「大丈夫か? 何か対策を検討しろ」と言われている情報システム担当も多いと聞く。
ただ、レガシーのブラックボックスという壁が立ちはだかり中々前に進めない実情がある。
本連載では5回に渡り、この打開策であるレガシーのホワイトボックス化を解説する。
IBM i(AS/400)ユーザーの現状
IBM i(AS/400)ユーザーの現状における課題は大きく以下の2つに大別できる。
1.世代の断絶による現行システム維持の危機
IBM i(AS/400)ユーザーの歴史は、20~30年におよぶ場合が珍しくない。前身となる「System/3(S/3)」シリーズを含めると40年以上のユーザーもいる状況である。この長い歴史の中でいつしか担当エンジニアは固定的になり、後継者も育てていないケースが多い。属人化と後継者不足という問題を抱え、担当エンジニア高齢化によりシステム維持が危機的状況となっている。
また、選択肢の多い現在においては若いエンジニアは古いイメージを持つIBM i(AS/400)に対する学習意欲も少なく、世代の断絶を埋める術が無い状況である。
2.近い将来に迫る企業競争力低下の恐れ
企業競争力を上げるにはDXを進める必要があるが、現行システムのブラックボックスが足かせとなり前へ進めず、国内外同業他社との企業競争力に差を付けられる恐れがある。
ホワイトボックス化ソリューションの登場
アプリケーション解析というアプローチ
企業競争力を損ねる前にレガシー資産のブラックボックスを解消する方法は無いのであろうか? 経済産業省が提唱するDXにおいて「レガシーな情報資産の現状を分析、評価し、仕分けを実施しながら戦略的なシステム刷新を進める」とある。
業務アプリケーションを解析し、機能ごとに4象限で評価、今後のシステムの再構築をプランニングするものである。
- 機能分割、刷新
- 機能追加
- 機能縮小、廃棄
- 現状維持
また、こういったDXの取り組みにあたって、企業のIT予算を2つの種類に分けている。
- A:ラン・ザ・ビジネス
- B:バリューアップ
Aは、現行システムを維持するための費用で、多くの企業で8割を占めている。Bは、将来に向けた企業価値を上げるための投資で、2割しかない企業が多い。
アプリケーション解析ツールの必要性
だが、レガシー情報資産の現状を分析、評価し、上記の4象限のような仕分けを全て人手で行うには、莫大な工数と費用がかかってしまうのが実情である。更に限られたバリューアップの予算では実現が難しい。また、IBM i(AS/400)のエンジニアは業界全体で不足、高齢化しているため、解析者を集めるだけでも一苦労である。その解析作業の効率化と解析者のスキルギャップを埋めるのがアプリケーション解析ツールとなる。が、ホワイトボックス化ソリューションとなり得るか、その選択も重要なポイントとなる。