米国で最大規模の燃料パイプラインを運営するColonial Pipelineが、ランサムウェア攻撃を受けてすべてのパイプラインの操業を停止したのは米国時間5月7日のことだ。それから3日経った今もこのパイプラインはほとんど停止したままだが、同社は10日、今週末までにはほぼ復旧できる見込みだと説明した。
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米国のエネルギーインフラを構成する重要な要素が、複数の州の住民に影響を及ぼしかねない大規模な操業停止に見舞われたのは、2021年に入って2度目のことだ。
2月、テキサス州は猛烈な冬の嵐に見舞われた。この嵐によってエネルギー施設が電力需要に対応しきれなくなり、何百万人ものテキサス州民と隣接する州の住民が、電気や清潔な水道水のない生活を強いられた。この危機は、米国を支えるエネルギーインフラが気候変動の影響に対してどれほど脆弱なのかを示す出来事となった。また、テキサス州が、これまでめったに起こらないと考えられていた事態に対して十分に準備できていない現状を浮き彫りにした。
カリフォルニア州クパチーノにある自動化システムのコンサルティング会社Applied Control Solutionsでマネージングパートナーを務めるJoe Weiss氏は、米国のガスパイプライン、送電塔、送電線のほとんどは、テキサス州のものと同じく、異常気象に対処できるだけの適切な気象対策がなされていないと指摘する。気候変動の影響で自然災害の規模や頻度が増している今、新たな異常気象によって電力網が脅かされるのは時間の問題かもしれない。
しかし、時代遅れとなった米国の電力網にとって脅威なのは気候変動のみではない。大規模な電力供給停止について分析した研究グループClimate Centralによると、米国の電力網は半世紀前からあまり変わっておらず、サイバー攻撃などの脅威に対して脆弱だという。また物理的装置に仕込まれたバックドアがもたらすリスクもありそうだ。これらの装置は、外国のメーカーから購入されることが多く、米国内で広く利用されている。
Weiss氏は、問題の核心はこの装置が特定の作業を実行するために設計されていることだとして、「モーターを回す、バルブを開ける、組み立てラインを動かすなど(中略)悪意を持って何かを仕掛けてくる者がいるなどということはまったく考慮されてなかった」と述べている。同氏は数十年に遡ってサイバー攻撃によって引き起こされた電力システム障害を1300件以上記録している。
米国のエネルギー供給網が抱える脆弱性は「存亡に関わる脅威」だとWeiss氏は述べ、次のように指摘した。「これは30年から40年にわたって積み上がってきた問題だ。1850年代の生活に戻ってしまう可能性もある。なすべきことがなされていない。この問題を無視し続けることはできない。悪事を働く者たちは(間違いなく)無視していない」
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。