NASAの火星探査機、宇宙望遠鏡を制御するコンピューターはどんな最先端の技術で作られているのだろう、身近なゲーム機器のコンピューターは高性能と聞くがどんなものなのだろう、と興味を持ったことはないだろうか?
実はミッドレンジコンピューター「IBM i(旧System i、AS/400)」と同じ標準技術でつくられたコンピューターチップが多く使われており、IBM iが古くて閉鎖的なものではないことの証明のひとつとなっている。
本記事では「IBM iをどうするか?」の前に、「こんな古いコンピューター、大丈夫なのか?」というイメージが付く場合の多い、IBM iの本当の姿を知った上で「これからどうするのか?」をエンジニアではない方にもわかりやすく考察していきたい。
そもそもなぜ、オフコンを導入したのだろう?
IBM iに代表されるオフィスコンピューター(オフコン)は1960年代からその歴史が始まり、1990年代前半に全盛期を迎えた。
IBM iの前身となるAS/400や「System/3」シリーズに、当時どのようなメリットがあったかを挙げると以下になる。
1.システム投資の手頃さ
大型コンピューターでは過剰投資となってしまう、中小企業や大手企業の部門、工場の情報化といったニーズに対し、マッチしたサイズのシステムであったこと。
2.システム開発の簡便さ
プログラムを開発するための言語、データベースやファイルなどのデータの入れ物にはさまざまな種類があり、使い勝手も機能性もそれぞれ違う。汎用機と呼ばれた大型コンピューターと違い、オフコンではビジネスユーザーに必要なものであり、それでいてコンピューターの深い仕組みをあまり意識せずに開発できるものに絞ってあるため、比較的簡便にシステム構築ができた。
3.システム運用の簡便さ
大型コンピューターのようにオペレーターが必須の運用だと、中小企業や大企業の部門では保持ができないため、安定稼働するための仕組が実装されている。IBM iはその前身のAS/400も含めて「障害停止が少ない(落ちない)」システムとして有名である。
このようなメリットを整理すると、大項目としては今の時代にも当てはまる、普遍的なニーズであることに気付くのではないだろうか?
また、1990年代後半から汎用機と呼ばれた大型コンピューターを、より小型のコンピューターにサイズダウンする動き(ダウンサイジング)が始まったが、その受け皿として、IBM iを利用し始めたユーザーも多い。昨今ではIBM iとかつては競合であった他社オフコンの撤退などでIBM iが同じく受け皿となっているケースも増えている。これはかつて開発言語の主流であったCOBOLで作成したアプリケーションの移行がしやすい点が大きい。