米議員らは米国時間6月11日、広範囲にわたる反トラスト法の立法議案を発表した。この数十年で最も有意義な反トラスト法の再構築となる5法案を超党派で提出し、Amazon、Apple、Facebook、Googleなど巨大企業の競争力の抑制を目指す。今回の法案は、デジタル市場での競争と「(4社によって)行使される規制されていない力」を1年以上調査した成果だという。
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法案は、オンライン生活のほぼすべての面に集合的に影響を及ぼしている巨大IT企業4社と、より広範な業界を対象にしている。法案が可決されると、政府は支配的企業に対し、企業分割を実行したり、先手を打った買収によって競合企業を消し去ることを防いだり、利益相反のあるさまざまな事業を操ることを抑制したりするのが容易になる。
米下院独占反トラスト法小委員会の委員長を務めるDavid N. Cicilline議員(ロードアイランド州選出、民主党)は、一連の法案が「競争の場をならし」、IT企業が同じルールに従うことを確実にするものだと述べた。
「現在、規制されていない独占的IT企業は、われわれの経済に対して過大な力を持っている。彼らは、勝者と敗者を選び、中小企業を破壊し、消費者に課す料金を引き上げ、人々を失業させる特異な地位にある」(Cicilline議員)
市場評価額の合計が6兆ドル(約660兆円)を超えるこれら4社の巨大な市場支配力は、米国で反トラスト法の指針となる基本原則を長年にわたり揺るがしてきた。議員らは、業界の振る舞いに懸念を強め、対処するよう強く求めてきた。2020年7月には、4社それぞれの最高経営責任者(CEO)が、Cicilline議員率いる小委員会に召喚され、6時間に及ぶ過酷な公聴会が開かれた。これは、IT大手の特に知名度の高いリーダーらに対する、前例のない公開質問だった。
シリコンバレーの支持者は、Apple、Amazon、Facebook、Googleがその規模の大きさによって、消費者に前例のない革新と広範な技術的利益を、多くの場合は安価で提供してきたと主張している。ビッグテックの批判者は、この業界の市場における巨大な力が、労働者に害を及ぼし、規模で劣るライバルを抑圧し、金銭以外の面で消費者に負担をかけていると反論している。
議員らによると、11日の立法議案に含まれる法案は、以下を目指すものだという。
- 支配的なプラットフォームによる差別を禁止し、プラットフォームが自己選択権を行使することや、「オンラインの勝者と敗者を選ぶ」ことを防ぐ。
- 競争上の脅威を抑えることを目的とした買収や、オンラインプラットフォームの市場支配力を拡大または定着させるような買収を禁止する。
- 支配的なプラットフォームが、複数の業種にまたがる支配力を利用して、自らを不当に有利にしたり、競合他社を不利にしたりすることを抑制する。
- 参入障壁を下げ、企業や消費者が新しいプロバイダーに乗り換える際のコストを削減することで、オンライン競争を促進する。
- 20年ぶりに買収申請手数料を改定し、米司法省と米連邦取引委員会(FTC)が必要な反トラスト活動を行うための資金を確保する。
IT企業の力を抑制する方向に向かっているのは米国だけではない。2018年、欧州連合(EU)は「一般データ保護規則(GDPR)」を施行した。これは世界の標準となるプライバシー規範だとみなされている。オーストラリアはIT企業に対して、自社サイトにリンクされたニュースコンテンツに対する支払いを求めている。中国やインドもIT企業への規制を強化している。
今回の新法案はシリコンバレーとホワイトハウスの間で長年熟成されてきた争いを激化させるものだ。
小規模な競合他社はこの動きを称賛した。
「App Store」に関するAppleの行動を声高に批判してきたSpotifyは、「反競争的慣行があまりにも長い間野放しにされ、競争を抑制し、イノベーションを脅かしている」と述べ、今回の提案について、「潮目が変わったという明確なサイン」とした。
一方、IT業界の人々やその支持者らは今回の法案について、世界における米国の経済的リーダーシップを損ない、消費者が自由にデジタルサービスにアクセスすることを阻むものだと警告した。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。