約半数の労働者は、数多くあるリモートワーク用ツールが生産性を落とし、作業の完了を難しくしていると述べている。
コーネル大学とソフトウェア企業Qatalogの調査によると、43%の労働者は、非常に多くの時間が異なるツール間を行き来することで費やされていると回答し、従業員らは、毎日最大1時間を異なるアプリケーションから横断的に情報を探し出すためだけに使っているという。
調査は、昨今の有無を言わせぬリモートワーク移行について、新しいソフトウェアの「無秩序な採用」をさまざまな組織で起こしており、燃え尽き症候群や「労働者の時間、集中力、創造性を奪うこと」を助長していると記している。
このような無秩序な労働環境は、チームが共同でクリエイティブなプロジェクトに取り組むのも難しくしており、62%の労働者は、コラボレーションの機会を失っていると感じている。
およそ10人中9人の労働者は労働生活が結果的に悪化していると回答している、と研究者らは述べている。
ソフトウェアは、従業員が在宅勤務をする際にデジタルのセーフティネットを企業にもたらしたが、リモートワークが2020年に導入された際、急だったゆえに計画を立てる時間はほとんど皆無だった。
そのため、多くの組織ではリモートワーク用ツールと生産性ツールがパッチワークのように組み合わされていることから、情報を見つけ出すのが難しく、業務の中断と実行を繰り返す「コンテキストスイッチ」が増え、生産性を損ねている、と研究者らは指摘する。
英国と米国の回答者1000人のうち半数以上(54%)は、利用が求められているさまざまなツールの多さにより、必要なものを見つけるのが難しくなっているとし、45%は、このようなコンテキストスイッチによる生産性低下を挙げている。
その結果、従業員は、毎週最大5時間を無駄にしながら異なるデジタルツール間を行き来し、タブからタブへと移動し、いくつものメッセージチャネルを調べまわっている。また、これにより職場での間違いが増え、48%は、それぞれのチャネルで進行していることの把握が困難になった結果、誤りが生じていることを認めている。
「仕事に必要なアプリの数が爆発的に増えているが、その結果としてあるのは生産性の向上ではなく、全くの混乱だ」とQatalogのCEO(最高経営責任者)兼創設者Tariq Rauf氏は述べる。
「各ツールは、どのような利点があるにせよ、デジタル環境のノイズを増やしており、それによって、文字通り、作業者の集中を妨げている。このような混乱に時間を浪費すればするほど、深い思考や同僚との有意義な関わりの時間が削られていく」(Rauf氏)
このようなソフトウェアを寄せ集めただけのアプローチは、セキュリティにも影響を及ぼす。62%は「不正」なツールを使用した独自の方法で仕事を片付けていることを認めているが、これにより、自分自身だけでなく、より広く組織を脆弱性に晒している可能性がある。
調査は結論として、業務の「ハイブリッド」モデル移行で必要になるのは、パンデミック以前には当たり前だった9時5時勤務から抜本的な転換を図ることだと述べており、そのような勤務では生産性アプリやワークプレイスソフトウェアが影響力を持つ範囲には目が向けられていなかった。
パンデミック後の労働モデルは、柔軟に仕事をする上での好みや自主性により主眼を置き、デジタルによる集中の阻害を抑え、労働者が自身の作業に集中できるようにし、その一方で共有された価値の文化と方向性も作り上げる必要がある、と研究者らは語っている。

技術はリモートワークを支えてきたが、その代償は?
提供:iStock/SeventyFour
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。