人工知能(AI)というものは、「大きな赤色のボタン」を押して起動するだけで、提示した疑問に対して誰もが決定的な答えだと自らを納得させてしまいたくなるような不透明な結果をもたらすものである必要はない。そうではなく、結果が示唆する知見を感じ取れる人を介在させることで、ある程度の統制下に置いておくべきだ。
提供:Joe McKendrick
これはスタンフォード大学の准教授であるGe Wang氏の言葉だ。同氏は、AIアプリケーション/システムの設計における人間中心型のアプローチを提唱している。同氏はこのほど、Stanford HAI(人間中心のAI研究所)がホストするウェブキャストの中で、AI関連の開発者やデザイナーに対して、大局的な観点からワークフローにおける人間系の役割の重要性を熟考するよう促した。同氏は「われわれはAIにおける答えからほど遠い場所におり、ほとんどの疑問に対する答えを有していない」と指摘した。
同氏によると、今日のAIシステムの多くは大きな赤いボタンをベースにして設計されているという。そして同氏は、「われわれがAIに望むものが何であれ、そのボタンを押せば魔法のように結果がわれわれにもたらされる」と述べた。その認識はまるで、「AIは、語弊はあるが知性とでも言うべきものを示すという点で、魔法のような品質を有している。そして複雑なタスクをこなすことができる。AIは人類が今まで生み出してきた事物の中で最もパワフルなパターン認識システムだ」というものだ。
ここで問題になるのは「われわれがAIに求めているものは何か?」ということになる。Wang氏は「われわれは、その答えに至るまでの過程を必ずしも示すことなく、適切な回答だけを与えてくれるようなお告げを常に求めているのだろうか?それともツールを欲しているのだろうか?より良い成果を目指した学習に使用できるものを欲しているのだろうか?またツール、すなわち道具というものはその定義上、人間とやり取りするものなのではないだろうか?」と続けた。
AIのループに人間系を取り込んでいく上で、必ずしも複雑な手段が必要となるわけではない。Wang氏は、AIアプリケーションのユーザーインターフェースに「スライダー」を導入するのは極めて効率的なアプローチの1つだと示唆している。同氏はAIシステムの設計に際し、「『このシステムにスライダーを追加できるだろうか?』というシンプルな疑問から始めることができる」と述べた。これはどういう意味だろうか。これによってどのようにシステムがより有用かつ興味深いものになるのだろうか。