原子時計を地球の自転に合わせるために半世紀にわたって用いられてきた「うるう秒」が段階的に廃止される。こうした調整の技術的リスクを懸念するテクノロジー大手にとっては、うれしい話だ。
提供:Vacheron Constantin
時間の管理に携わる世界各国の当局が現地時間11月18日、国際度量衡局(BIPM)の会議で、うるう秒の利用停止を投票で決めた。
BIPMは、うるう秒廃止の理由について、「うるう秒の採用によって生じる不連続が、衛星ナビゲーションシステムや通信、エネルギー伝送など重要なデジタルインフラに深刻な誤動作をもたらすリスクがある」と述べている。
変更は2035年までに実施される予定だ。新たな方針は、今後100年以上使えるように策定されている。
これほど正確な時間管理は、難解な科学の領域のように思えるかもしれないが、コンピューターがタスクを常時追跡し、適切な順番で動作するようにしなければならないデジタル時代には、極めて重要なことだ。時を刻むデジタル時計は、オンラインで行われることすべての基盤となっている。
「Facebook」を運営するMetaは7月、うるう秒廃止を強く求め、「タイマーやスケジューラーに依存するソフトウェアに壊滅的な影響」を与える恐れがあると警告した。BIPMに関連する委員会が測定や科学技術の専門家を対象に行った調査でも、同じ見解が示された。
こうした懸念には根拠がある。2012年には、うるう秒の調整をきっかけとしてRedditの大規模障害が発生し、Mozilla、LinkedIn、Yelp、航空機予約サービスAmadeusも、関連する問題に見舞われた。2017年には、ネットワークインフラ企業Cloudflareでうるう秒に起因する障害が発生し、一部の顧客に影響した。
これまでのうるう秒は、地球の自転の遅れを埋め合わせるために挿入されたが、地球の自転が速まっていることを示す証拠がある。つまり、うるう秒を廃止する必要が生じる可能性があるわけだが、これまでに実施されたことはない。
地球の時間が協定世界時(UTC)と一致しない場合も、うるう秒が適宜追加されることはなくなるが、BIPMの投票では調整の可能性が残されている。まだ未確定だが、ある程度の時間差が生じたら、時計を調整できるように方針を決めることをBIPMは推奨している。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。