富士通と和歌山県立医科大学は11月21日、富士通の人工知能(AI)技術「行動分析技術 Actlyzer(アクトライザー)」を活用した見守り技術を用いて、転倒などの状況を早期に発見し、骨折などの重症化リスクの低減を目指す実証実験を実施すると発表した。
行動分析技術 Actlyzerは、カメラを使うことなくミリ波センサーで人の姿勢を推定し、姿勢の変化から行動を検知する技術。同実証の期間は2022年11月21日~2024年3月31日。
富士通は、実証実験の取得データを分析するとともに、和歌山県立医科大学が評価した分析結果を基に見守り技術の向上に取り組む。また同技術を活用し、病院などにおいて高齢者の重大な障がいにつながる転倒などの動作を即時に検知し、職員に通達する見守りサービスを開発し、2023年度中の提供を目指している。
実証の全体像
全日本病院協会によると、国内18病院において、2021年度は1カ月当たり290件の入院患者の転倒が発生している。高齢者の転倒は重大な障がいにつながるリスクが高く、見守りが必要な一方、病室などにカメラを設置する手法は、患者のプライバシーを損なうことから導入が難しい。そこで富士通と和歌山県立医科大学は、カメラを使わない見守り技術を用いて、病院などにおける高齢者の転倒などの状態を早期に発見し、適切な対応につなげる実証の実施に至った。
両者は、病院などの施設において、被験者として高齢の患者や要介護者を募り、実証を行う。室内に設置したミリ波センサーから患者の姿勢を点群データとして収集し、富士通の見守り技術が検知した転倒や転倒につながる動作の結果について、ベッド周りに設置されている離床センサーのログや実証用に設置されたカメラ映像などと比較することで、適切に検知できているかなどを評価し、改善に取り組む。点群データは、電波の照射と対象人物からの反射で取得されるため、個人を特定する情報を含まず、プライバシーに配慮した見守りが可能だという。
実証では、富士通が見守り技術の提供、データの収集・分析、技術評価に基づく技術の向上、和歌山県立医科大学が医療現場としての技術評価、技術向上に向けた方向性の提案を行う。