Googleの「Bard」は、発表時のデモでジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡に関する質問に対して誤った答えを返したことで、出だしからつまずいた。それから1カ月以上が経過し、同社は順番待ちリストを通じて、Bardへのアクセスを提供し始めた。Bardにアクセスする機会を得た筆者がその第一印象をお伝えする。
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「ChatGPT」は多種多様な機能を備えている。コードを記述したり、ユーザーと会話をしたり、MBAの試験に合格したり、小論文の執筆を手伝ったりといった具合だ。一方で最大の制約は、インターネットにアクセスできず、2021年以前の情報しか利用できないことだ。
それを考えると、理論的には、インターネットにアクセスできるAIチャットボットは、ChatGPTよりもはるかに優秀であるはずだ。「Bing」のチャットはその期待に応え、ハードルをさらに上げた。筆者はBardの能力の高さに圧倒されるに違いないと思っていたが、実際に使用してみて、驚かされることになった。
Bardは、世界で最も人気のある検索エンジンと統合されているにもかかわらず、その機能や知識は限定的だ。
最初に気付いたほかのAIチャットボットとの違いは、回答を生成するのにかかる時間だ。30秒以内には生成されるものの、ChatGPTやBingのチャットと比べてかなり遅い。
使用されている大規模言語モデル(LLM)の違いが原因なのかもしれない。BingのチャットとChatGPTが「GPT」シリーズのLLMを使用しているのに対し、BardはGoogle独自のLLMである「LaMDA」の軽量版をベースとしている。
Bardが多くの単純で教科書的な質問に答えられないことにも驚かされた。例えば、「歴代のすべての米国大統領の名前は?」と尋ねたところ、答えが1つも返ってこなかった。
提供:Screenshot by Sabrina Ortiz/ZDNET
Twitterのユーザーたちも、同じ問題について不満を述べている。あるユーザーによると、Bardは米国の全50州の名前を答えられなかったという。
PLEASE USE GOOGLE BARD
— near (@nearcyan) March 22, 2023
PLEASE USE IT IT'S JUST LIKE CHATGPT I PROMISE pic.twitter.com/XcJJhwVpU7
また、Bardには、生成する回答のソースが提示されないという問題もある。Bardと同様にインターネットに接続されているBingのチャットは、脚注とソースを提供してくれるので、それらをクリックして、より詳しい情報を学んだり、情報を検証したりできるが、Bardの場合は、提示された回答を受け入れるしかない。
例えばBardは、「What are the biggest news stories today?」(今日の注目ニュースは何?)というプロンプトに対して最新のニュースをうまくまとめてくれたが、それらのニュースについて掘り下げたければその結果を自分で検索バーに入力する必要があった。
ChatGPTでも情報源は示されないが(これはChatGPTの大きな欠点だ)、ChatGPTがインターネットに接続されていないことを考えれば、これはやむを得ないことだ。
Bardは回答のあとに「Google it」というボタンを表示するようになっており、これを使えば、入力したプロンプトに関するGoogle検索エンジンの検索結果を表示できる。ただし、以下のスクリーンショットを見れば分かるように、求めている答えを見つけるには、通常のGoogle検索のように画面をスクロールして自分で探す必要がある。
提供:Screenshot by Sabrina Ortiz/ZDNE
基本的な事柄についてのBardの説明は、Google検索が提供できる説明にすら及ばなかった。ChatGPTのリリースから得られた自分の経験について記録しているペンシルバニア大学ウォートン校のEthan Mollick教授も、Bardが学習支援に使える能力を持っているかどうかをテストした際に、同様の体験をしている。