Sansanは5月30日、クラウド型の請求書受領サービス「Bill One」のオプションとして法人カード「Bill Oneビジネスカード」の提供を6月1日に開始すると発表した。代表取締役社長で最高経営責任者(CEO)の寺田親弘氏は、法人クレジットカードにまつわるアナログなビジネス業務、インボイス制度や不正利用リスクへの対応が可能だと強調しながら、「Bill Oneビジネスカードを使用すると、経理DXと月次決算を加速できる」とサービスの価値を主張した。
Sansan 代表取締役社長/CEOの寺田親弘氏
同社は5月8~15日にかけて全国の法人カード管理業務に携わる従業員1000人を対象に調査を実施。これによると、法人カードで決済機会が増加したと回答したのは45.5%。さらに利点を感じる担当者の割合は58.8%に及んだ。
「従業員の立て替え業務の負担を軽減できた」という声が挙がる一方で、「利用明細との照合に時間を要する」「証憑(しょうひょう)の回収に時間を要する」といった管理側の課題も浮き彫りとなった。さらに今後はインボイス制度や電子帳簿保存法への対応も求められ、経理部門への負担は増すばかりだ。
Bill Oneの年間経常収益(ARR)は2023年2月時点で27億4800万円、前年同期比のMRR(月次経常収益)は153%増と順調に成長している。Sansanはさらなる成長を見込んで、Bill Oneビジネスカードの導入に踏み切った。
Bill Oneビジネスカードは、バーチャルカード(物理カードなしで支払いに使える仮想カード)とリアルカード(従来の物理カード)を用意し、前者は即時発行が可能。Bill Oneのユーザー企業は無償で利用でき、カード発行枚数も上限がない。提携ブランドはVisa。
カードの種類
Bill Oneビジネスカードの特徴
執行役員でBill One Unit ゼネラルマネジャーの大西勝也氏は、「法人カード業務は三重苦を抱えている。利用明細と証憑の照合をデジタル化することで業務を効率化し、(業務が煩雑化する)インボイス制度/電子帳簿保存法への対応、カード利用者や利用期間を制限することでリスクを低減できる」と語った。
なお、カードの利用者やギャンブルや金融サービスなど特定種別の利用先を制限したり、使用状況を経理部門がリアルタイムに把握したりできるのも利点の一つ。企業当たりの利用限度額は1カ月で1億円。広告宣伝費やサーバー費用の支払いにも利用可能という。今後はスマートフォンで撮影した領収書のデジタル化や本人認証サービス「3Dセキュア」への対応も予定している。
Sansan 執行役員/Bill One Unit ゼネラルマネジャーの大西勝也氏
一見するとユーザー側の利点が多いBill Oneビジネスカードだが、Sansanは「証憑データ(のデジタル)化料金とカード利用手数料」(大西氏)で収益化するとビジネスモデルを説明した。前者はBill Oneに限らず、名刺管理サービス「Sansan/Eight」で培ったデジタル化手順を応用し、1枚当たりの手数料が発生する。現在、約200社が同サービスの利用を表明しており、既に「月額6億円、1年後には月額50億円を目指す」(大西氏)と強気の姿勢を表明した。
また、寺田氏は「企業間の資金流通は年間1000兆円と言われている。この部分をシームレス化すれば、日本の企業や社会全体の生産性は大きく向上する」と業務工程自体をデジタルで簡略化し、自社がビジネスインフラ化する未来像を描いている。