freeeは8月24日、クラウド型ERP「freee統合型ERP」の提供を発表した。同社の「freee会計」「freee人事労務」「freee販売」を組み合わせたサービスで、利用にはfreee販売スタンダードプランの契約が必要となる。最高製品責任者(CPO)の東後澄人氏は会見で「ビジネスのあらゆる業務がfreeeの製品を利用することでシームレスにつながり、一つのソフトウェア上で完結できる世界を実現する」と強調した。
freeeの調査によれば、従業員2~5人規模の中小企業の場合、紙や表計算ソフトの利用率は約80%に及ぶ。また、「中小企業白書」よると、中小企業の労働生産性は540万円だが、大企業は1099万円と約2倍の格差があるという。
さらに財務省の「法人企業統計年報」によれば、大企業の赤字比率は8.9%だが、中小企業は36.4%と非常に高い。2021年の休廃業・解散件数は4万4377件と2020年の4万9698件を下回るものの、中小企業庁による民間調査を開始した2000年以降で過去3番目の高水準である。
freee CPOの東後澄人氏(写真提供:freee)
東京商工リサーチの「2018年倒産企業の財務データ分析調査」によれば、中小企業の48%は黒字倒産で、その背景には増収を得ながらも事業運営の資金不足に陥っているという。
東後氏は「紙・表計算ソフトに頼った未システム化、利益が出ても翌月のキャッシュがなくなるなど経営情報の把握、与信審査が通らず資金調達できない」ために大企業と中小企業の差が生じていると指摘し、これらの背景からfreee統合型ERPの市場投入に至ったと説明した。
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前述の通り、freee統合型ERPは同社が提供する会計、人事労務、販売などの既存製品を組み合わせつつ、連携機能を加えたサービスだ。工数管理と販売データの連携で粗利益の計算を実現し、案件の赤字/黒字を容易に把握できる。
東後氏は「今まで製品間の連携に注力してきた。大企業が利用するERPは表計算ソフトなどを使用せずに完結する。freee統合型ERPも同様だ」といい、「ERPの名前に恥じない」サービスであると強調した。
freee販売スタンダードプランの契約が必要になる点についても、「(各製品をまとめて)購入するプランは用意していない。freee統合型ERPに関心を持った中小企業は問い合わせをいただいて、需要に合わせた(freee会計などの)個別提案を行う。その際は若干の割り引きを適用する」(東後氏)と料金体系を説明した。
ただし、freee販売スタンダードプランも個別見積もりとなる。同社製品は事務管理部門向けが多かったものの、freee統合型ERPは営業部門やマーケティング部門など顧客接点が多いフロントオフィスのビジネスパーソンが関わる見積もり作成や承認管理、勤怠管理、入出金管理、案件管理、請求書管理、各種集計を通じて、受託型・請負型の無形商材ビジネスを支援する。さらに今後は有形商材に対応するため、実店舗の「透明書店」で在庫管理の運用試行にも取り組み、freee統合型ERPの機能強化に反映する予定だ。